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鈴木 薫 稿
「消費税の諸問題とインボイス方式導入に関する一考察」

 ―EU付加価値税の動向を探りながら―
(富士大学大学院 院生)


 本論文は、将来消費税が増税されていく過程で税制上の歪みや不公平を是正するため、EUの付加価値税制度を参照しながら、インボイス方式の導入に向けた検討を行うことを目的としている。

 まず第1章では、わが国に消費税が導入されるまでの経緯について記述され、次いで第2章では、EUにおける付加価値税導入の経緯とインボイス方式について詳細に説明されている。第3章では、わが国の消費税の特徴として帳簿方式の問題が取り上げられ、消費税制度に対する不信感、不公平感を払拭するためには、特例措置の見直しとともに、仕入税額を正確に控除するために、インボイス方式を導入することが必要であると主張されている。

 また、インボイス方式の利点として、インボイス方式では免税事業者はインボイスの発行ができないというように、目に見える形で適用除外の意味が明らかにされるため、取引事業者間で税額が明確に意識され、税額転嫁が促進され、取引当事者間の相互牽制作用が働き、事業者の納税の適正化につながること、輸出免税を行う場合に正確な還付税額が算出されること、国際取引や電子商取引の増大に対応しうること、などが挙げられている。

 さらに第4章では、インボイス方式を採用するにあたっては、課税事業者番号の導入が不可欠であること、申告納税に係る手続を簡素化するために少額取引については簡易インボイスを採用する一方、脱税や租税回避を防止する観点からインボイスの記載事項を厳格化し、迅速に事業者の取引状況を把握するシステムを構築すること、などが提案されている。

 以上のように、本論文は、重要性がますます高まると予想される消費税に対する不公平感を払拭するためには、仕入税額を正確に控除しうるインボイス方式の導入が不可欠であるとの観点から、EUの付加価値税制度を参照しながら、インボイス方式導入の可能性を探求したものである。現在EU諸国で行われているインボイス方式の改革がわが国においても適用可能であるかどうかについて、今一歩踏み込んで具体的に考察されるならば、よりいっそう深みのある論文に仕上がったであろう点は惜しまれるが、修士論文として手堅くまとめられており、租税資料館奨励賞に相応しい作品と評価することができよう。


論 文(PDF)・・・・・・923KB


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