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谷内 陽一 稿
「私的年金税制の公平性・中立性に関する一考察」

 ―少子・高齢社会の到来を踏まえて―
(早稲田大学大学院 院生)


 本論文は、高齢化が進展する現段階において重要性が増しつつある私的年金についての課税の在り方について、単なる優遇税制の拡大という観点からでなく、課税所得概念の検討という基本的問題をふまえつつ、年金受給者と負担者の区分や年金拠出時、運用時、および給付時という区分に基づき、現状の分析、問題点の検討、改善意見を述べたものである。

 先ず租税原則、所得税の類型、所得概念等の税の基礎理論と私的年金税制の理論を検討し、年金課税の特質として、拠出時、運用時および給付時というタイムラグがあること等を述べ、支出税によった方が運用益の包括課税が行われない分、包括的所得税より給付原資が大きくなること、同一所得概念による限り拠出時課税と給付時課税とのいずれによっても差がないこと(ただし、税率の変更等による差は生じる。)を検証し、包括的所得税か支出税かの差は運用益課税の有無であること、入口課税と出口課税に有利性の差は無いこと、そして原則は包括的所得税によるべきで、例外として導入されている年金の出口課税についての優遇措置は制限的に、厳しいものであるべきものであると論じ、企業年金と個人年金、企業年金間の公平性を検討している。

 次に、我が国の年金税制を述べ、拠出時課税、運用時課税および給付時非課税という入口課税(TTE)の取扱を見て、あと公的年金は非課税、厚生年金基金等は支出税による出口課税、確定給付年金と適格退職年金では、事業主拠出は出口課税というETT(拠出時非課税・運用時課税・給付時課税 Exempt-Taxed-Taxed)形態で加入者拠出は支出税に基づく入口課税TEE(Taxed-Exempt-Exempt)形態、個人年金は保険型はTEE、貯蓄型はTTE形態と分類している。そして外国の年金税制について課税局面および課税形態ごとに分類し、多数のOECD諸国ではEET形態を採っておること、他の税制とのバランスも考慮していること、等の示唆が述べられている。次に我が国の年金税制の問題点と課題について、拠出段階では各種の所得控除の統合と所得控除から税額控除への転換を説き、運用段階については所得概念に徹した課税と特別法人税について金利に応じた税率を述べ、給付段階については一時金と年金とを総合的に包括評価することを提案している。

 最後に結論として、所得概念の在り方として包括的所得税を堅持することが望ましく、優遇税制は給付等との関連で考えられるべきであり、給与、年金、退職金ということによる差異を無くして給付時課税を強化することが必要であるし、私的年金税制の優遇の前に租税全体における公平性、中立性の再整備が先決であると結んでいる。

 以上のように、本論文は私的年金税制について、所得概念や負担の公平といった基本理念から見直して制度を分析し、年金の拠出、運用、給付という三つの面から、諸種のデータなどを用いながら綿密に検討してその是正の提言を試みているものであり、優れた論文であると評することができる。


論 文(PDF)・・・・・・766KB


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