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松橋 昌男 稿
「事業承継推進のための課税制度に関する一考察」

 ―取引相場のない株式の評価制度の法定化に向けて―
(明治大学大学院 院生)


 本稿は、円滑な事業承継推進の阻害要因である「取引相場のない株式」の相続について、特に評価制度が抱える問題を判例等から明らかにしようとしている。すなわち、平成12年度の要望で、「類似業種比準方式と純資産法式」、「収益還元方式」、「特定の評価会社等の評価方法の見直し」(土地保有・株式保有会社)、「開業後3年未満の会社」、「相続税の課税時期直前3年間の利益及び配当等がゼロである会社」が提案された。これらの要望によって類似業種比準方式の併用を認める措置が取られた。平成13年改正においては、類似業種比準方式に収益性が加味され、小・中会社の斟酌率を引き上げるなどがなされた。取引相場のない株式については、評価の不安定性の蓋然性を踏まえ、会社の規模による異なる斟酌率を一律小会社の率[最小0.5%]にあわせるなどを提案しているが、対応はない。

 平成18年には、会社法の施行の影響で、種類株式の評価の明確化が要望された。しかし、それには何の対応もないので、平成19年には、典型的な種類株式(配当優先の無議決株式、社債類似株式、拒否権付株式)について一応その評価方法が明確にされた。

 平成20年には、相続税制度の改正(「遺留分への対応」、「税法上の親族範囲の見直し」)がなされた。

 また、課税物件(土地と建物)からみる事業承継税制の経緯の章において、昭和58年の「小規模宅地の課税特例の法制度化」や、取引相場のない株式の評価等について説明している。特に、取引相場のない株式の評価について、その経緯から、問題点を提示している。例えば、この評価は法令によらずに通達によっており、判決においては、その合憲性の判断を合理性を基に判断しているが、筆者は疑問としている。

 最後に事業承継税制の確立に向けて、平成20年に提示された納税猶予制度について検討している。外国の同種の制度にも言及している。

 本稿は、わが国の相続税、特に事業承継に関連する税制の経緯やその内容について良く整理しており、それぞれについて問題意識を持って考察している姿勢が伺える。

 また「取引相場のない株式」の評価については、もっぱら評価通達によって実務が行われ、裁判官も評価通達に沿った判断を示すことが多い点について、この通達による評価の問題に関して裁判例の研究を通して考察し、法制化の必要性を提言している。

 筆者の「今後は、相続税のあり方、特に遺留分の対応も含め、学際的な視点で事業承継問題について研究を深めていきたいと考えている。」との研究成果に期待するものである。


論 文(PDF)・・・・・・1.09MB


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