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青野 勝広 著
「不動産の税法と経済学」

(株式会社 清文社 2008年9月刊)


 本書は、経済学や税法をベースとしつつ、譲渡所得税を中心に固定資産税、相続税、不動産取得税を分析するとともに、改革案を提示した不動産税制に関する包括的な研究である。

 第1章では、先行研究による売却時中立型の土地譲渡所得税の提案を比較し、その問題点を明らかにする。具体的には、「含み益利子税付き譲渡所得税」や、「精密型」売却時中立課税、「清算型」売却時中立型、及び売却時中立課税の問題点を指摘している。第2章で、先行研究の「新譲渡所得税の死亡時課税」の問題点を指摘し、個人に対してのみ適用できる新しい譲渡所得税の死亡時課税を提案する。第3章では、法人に対する「含み益利子税付き譲渡所得税」との併用を提示している。第4章では、法人の5年超の保有について「含み益利子付き譲渡所得税」を課す提案を行っている。第5章では、二重利得法と土地譲渡との関連を分析し、二重利得法は譲渡所得税の繰延べには役にたたないとし、税率を問題にする。第6章では、相続の単純承認、限定承認の問題点、みなし譲渡所得税、凍結効果等について、第7章では、不動産取得時の税の凍結効果、第8章では、固定資産税等の評価の問題等をとりあげ、さまざまな政策提言をおこなっている。なお、これらの議論を行う枠組みとしては、我が国の不動産関連課税の凍結効果を論じるのに伝統的に用いられてきたモデルを利用している。

 本書は、非常に広範な観点から不動産関連税制の凍結効果への影響を分析している。特に評価できる点は、個人に対する「新譲渡所得税の死亡時課税」や法人に対する「含み益利子付き譲渡所得税」等の新しい提案を行っている点である。また、従来の分析ではあまり取り上げられてこなかった二重利得法、相続の単純・限定承認、不動産取得税・登録免許税および固定資産税と凍結効果の関係を論じていることも興味深い。凍結効果についても、不動産所有者と不動産購入者の意思決定を踏まえたモデル分析を行っており、説得力がある。

 本書の幅広い観点からの分析・提案は意欲的であり、高く評価できるものであり、受賞にふさわしいと考える。


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