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冨山 恭道 稿
「相続税法における営業権の財産価値とその評価」


 相続税法では自己創設営業権も課税対象に含めており、その具体的な評価の方法は財産評価基本通達165、166において定められている。本論文はこの現在における相続税法上の営業権評価の取り扱いに焦点をあて、その計算構造及び計算要素につき、評価理論上の問題点を摘示するとともに、営業権評価のあるべき姿を提案したものである。

 本論文において著者は、まず、営業権とは「超過収益を獲得できる無形の財産的価値を有している事実関係」と解し、それが換金能力または売却価値をある程度有して、市場性に準ずる要件(著者の言葉によれば「準市場性」)を具備していれば、有償取得ではない自己創設営業権であっても、担税力を認めることができ、少なくとも相続税法上では課税対象となるとしている。その上で著者は課税実務の世界において、自己創設営業権の評価方法を定めた財産評価基本通達165、166を検討の俎上にあげ、同通達の定める評価方法につき、計算構造及び計算要素の両面からその問題点を明らかにしている。すなわち、営業権の源泉は、企業が長年にわたり築いてきた事業の安定的な優越的地位であるにもかかわらず、通達は超過収益力そのものを営業権とみなしており、事業の安定的な優越的地位と超過収益力との論理的な因果関係等を明らかにしていないこと、超過収益力自体の計算につき、通達は税法上の税引き前の課税所得を用いているが、それがフロー概念であり、しかも政策的要請により本来の所得概念を歪めたものであることから、営業権の評価になじむものかは疑問であるとしている。さらに、超過収益力の計算において重要な要素となる、総資産利益率、超過収益力の持続年数、あるいは経常化、標準化等のための調整計算、時価総資産額の範囲、そして現在価値割引率に使用されている基準年利率等について個別的に検討を加え、いずれについても適正な評価という観点から問題が存在しているとしている。そして、筆者は自己創設営業権の評価のあるべき姿について、例えば、(1)標準総資産利益率を著しく超過した場合のみ営業権があるとすべき。(2)営業権の評価においては、税引き前でなく税引後の所得に基づいて計算されるべき。(3)標準総資産利益率は全業種ではなく、業種別のそれを用いるべき。(4)超過収益力の持続する年数は10年ではなく5年とすべき。(5)現在価値割引率については、現行の基準年利率にリスクを加味したレートに改めるべき等の具体的改善案を提言している。

 また、平成19年度改正における事業承継税制の一環として、営業権の評価方法も改正され、平成20年1月より、現行の財産評価基本通達165、166が適用されることとなった。本論文は、事業承継税制の一環として平成20年1月施行の新財産評価基本通達165、166が、企業の評価理論に照らし合理性なものなのかを、計算構造、計算要素の個別的な部分にまで立ち入って、丁寧に分析しており、具体例を用いた説明には説得力がある。また、結論として、筆者は現行通達には、依然としていくつかの問題点があり、より合理的な評価手法として、上記の5項目等の具体的な改善策を提言している。

 また、資産評価については、合理性、正確性に加え、簡便性も要請されるところであるが、筆者の提言は決して理論偏重ではなく、実務に耐えることができる簡便性にも配慮したものであることも評価すべきものと考える。


論 文(PDF)・・・・・・605KB


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