公益財団法人租税資料館


トップページ>>租税資料館賞>>第19回入賞作品>>「REIT税制の国際的側面についての基礎的考察」
戻る 次へ

恩田 哲保 稿
「REIT税制の国際的側面についての基礎的考察」

(筑波大学大学院 院生)


 本論文の構成内容は次の通りである。
 第1章では、各国におけるREIT制度が、その法的形態が米国やわが国と類似のものなのか、あるいは課税上の仕組みは共通する部分があるのかを考察し、わが国のREITの課税上の基本的な考え方を整理している。第2章では、わが国のREITが租税条約上どのように扱われているのか、また、わが国のREITの法的形態が複数存在しており、その事業体ごとに租税条約上の適用を変えてもよいものかについて考察している。第3章では、REITから生じる所得がどのような国際課税上の問題を引き起こしているのかについて考察している。第4章では、わが国の匿名組合を活用したREITスキームに関して、今後どのような課税上の見直しを行っていくべきかについて考察している。匿名組合がREITのような金融商品の投資媒体として活用される場合には、現行の課税ルールは適用可能なのか、また、匿名組合を活用したREITの所得分類はどのように考えればよいのか。そして、今般、OECDモデル租税条約で提示された大・小投資家の区分のメルクマールは妥当なのか、さらには、そのメルクマールは、匿名組合を活用したREITにも適用可能であるかについて考察している。

 本論文での主なる主張は、次の2点に集約される。まず第一に、不動産投資を配当所得に変換する導管であるREITという器は、同様な経済的効果をもたらすにもかかわらず、その事業体の法的形態の違いによって、租税条約の軽減税率の適用が異なることは問題であり、特に投資環境のグローバル化が進展する中で、源泉地国と居住地国の適切な税配分、内外投資の公平性及び中立性とREITの活用の観点からすると、いかなる事業体であっても、公平に租税条約の軽減税率の適用がなされるべきとしている。次に、2008年に改訂されたモデル租税条約により、REITからの配分では、全ての資本の10%未満を保有する小投資家はポートフォリオ投資による配当を受けるに過ぎず、一方10%以上を保有する大投資家は国内法に基づく課税をできることとしたことについては、現状では妥当であるとしても、今後の不動産市場の活性化をどのように政策的に考えるかによって、その10%基準の変更もあり得るとしている。そして、この10%基準は、匿名組合を活用したREITについても適用可能と考えられるものの、他の事業体と比較して出資者が少数である場合には、ポートフォリオ投資とはいえない可能性が高いため、適用除外とすべきとしている。このため、他の事業体と同様な出資人数の要件を課した上で、租税条約の軽減税率を適用すべきとしている。

 本論文では、REITにおいて、それが国内市場向けのものだけでなく、国際市場でも取引されてきていることから、その所得の配分を各国の税制でどのように課税すべきかを検討し、特に、モデル租税条約において規定されている軽減税率は、公平性や中立性に配慮してその適用がなされるべきと提言している。

 全体の論文構成が極めてよく纏まっており、問題意識もぶれておらず、論旨も明確である。文献の引用等も適切であり、我が国での取り扱いも常に意識し、それに触れており、全体として優れた論文といえよう。もっとも、いま少し我が国の現状や制度全体の姿を平明に提示されれば、さらに良かったように思われるが、その点は論文の優秀さを損なうものではない。


論 文(PDF)・・・・・・568KB


戻る 次へ




Copyright (c) SOZEISHIRYOKAN. All Rights Reserved.