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高尾 尚明 稿
「銀行業を営む外国法人の支店に対する課税について」

(大阪経済大学大学院 院生)


 一般に本支店間の支払利子は企業の内部取引であり、経費としては認められないが、主たる業務が資金の貸借である銀行業については取り扱いが異なる。とくに経費控除の算定や銀行の本支店に帰属する所得の取り扱いについては、国際的な二重課税問題を惹起している。本論文は、OECD、米国、わが国の法規定と裁判例、国際条約等を参考にしながら、銀行の内部利子に関する国際的二重課税問題と、わが国がそれにどのように対応していくべきかを検討する。内容には、利子を受け取る側での所得課税の問題(所得性の認識、所得源泉など)と、利子を支払う側でその利子を損金として扱えるのかという問題、それに、もし損金性が認められるとして、どの範囲で認めるべきか、という多様な問題が含まれている。

 本論文は、4章で構成されている。第1章では、銀行業の内部利子に関するOECD内部の議論の概観し、OECD内部では内部利子を銀行本来の業務の一部と考え、資本と認められる部分を除き、OECDがその損金性を認めてきた状況を説明する。第2章では、法人税法の規定や審判所の裁決、わが国が締結した租税条約などを通して「わが国の状況」を検討する。そこでは、わが国の裁決例では、一定の範囲で損金性を認めてきた旨を紹介すると共に、わが国では具体的な算定方法を法令上定めておらず、内部利子の取り扱いや関連規定の解釈が統一されていない状況を指摘する。第3章では米国財務省規則制定の経緯とその概要、財務省規則と租税条約との関係、財務省規則やルーリングと租税条約との適用関係をめぐる連邦請求裁判所判決の概要とその後の展開を紹介する。第4章では、わが国の法令上、内部利子の取り扱いや算定方法を定めた具体的規定を欠くことから、OECDの基準が必ずしも働かないことや、わが国所在のPEに帰属する所得に対する二重課税が生じることなどの問題点を強調し、対応策として、銀行業に関して、無償資本の配分規定を含めた内部利子の算定に関する国内法上の立法措置をとることと併せて、租税条約にも国際的二重課税に対応するような明文規定を入れるよう提言する。

 本論文は、国際課税上のホットイシューをテーマとして取り上げており、その着眼点の良さが光っている。この種の問題に関する米国の状況については先行研究があまりないため、今後における国際課税の研究にあたって有益な情報を提供するものとして大いに期待される。米国の関連規定(財務省規則等)あるいは判決の変遷に関する部分は、資料の検索や判決の検討なども丁寧に行っており、問題に取り組む著者の姿勢は高く評価されよう。非常に多岐にわたる問題を丁寧にフォローしており、その研究視野の広さも十分評価に値する。ただ、本論文では、それらの問題を未整理のまま提示している傾向があり、全体の論旨がやや分かりにくくなっている面がある。その他の点では丁寧な作業を行っており、上の点も本論文の価値を何ら損なうものではない。


論 文(PDF)・・・・・・481KB


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