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竹城 輝彦 稿
「相続財産の移転に伴う課税関係
 ―相続税と所得税の課税の交錯の問題を中心に―」

(立教大学大学院 院生)


 本論文は、相続財産の移転に伴う課税関係について、相続税と所得税の課税が交錯することにより生ずる問題を中心に考察をおこない、現行制度において課税上の問題点が確認される場合には、その解決に向けた道筋を提示することを研究の目的としている。

 本論文の構成内容は次の通りである。第1章では、契約者の死亡に伴い相続人が年金形式で受け取ることとなった生命保険金について、相続税と所得税の二重課税が争われた事例を取り上げ、裁判所の判示の内容及びこの事例に対する先行研究の内容を検討している。第2章では、相続税と所得税の現行の法律関係を整理している。第3章では、二重課税の定義を示したうえで、個別税法間における二重課税に対する租税法の対処について検討している。そして、相続税と所得税の関係について、相続という特異な原因による財産の移転であることなどを考慮して個別税目になっているものの、包括的所得概念のもとにおける同種の租税と考えられることを指摘している。二重課税については現行制度上、所得税の非課税規定により基本的に対処されているものの、年金形式の生命保険金などにおいて二重課税の状態が残存していることを指摘している。この現行制度が対処しきれていない部分の二重課税に対して、相続財産から生ずる純資産の増加分に対して相続税と所得税とで過不足無く課税されるかたちの課税関係を提示している。この方法によると課税上の不公平が解消するとしている。最終章の第4章では、前章までの考察を整理して、現行制度では対処できない二重課税を抽出している。すなわち、相続後に生ずる相続財産と同一と考えられる所得について生じる二重課税に対しての具体的な対応策として、具体的な立法措置案を思案として示し、さらに同様の点検を他の財産に対しても行うべきことを指摘している。

 本論文では、生命保険契約の年金契約に係わる相続税と所得税の二重課税問題を取り上げて、事実としてその二重課税が残存してしまうことが確認できるとして、その二重課税を解消する私案として、所得税法施行令第183条第1項第2号の改正条文を示している。そして、さらに、相続が関わる場合で、支払保険料を基礎とした金額を必要経費とすることにより二重課税が残ってしまうことになるとして、相続税が関わる場合と相続税が関わらない場合とに分けて、私案を規定している。また、現行制度を修正し、当該二重課税を排除する方法として、受取年金を死亡一時金の分割回収額と捉え、相続税評価額が割引現在価値となっていることから生ずる利息に相当する部分のみを所得税の対象とする方法も一つの方策として考えられるとしている。

 筆者は、包括的所得概念から、相続税を所得税の補完税として整理し、相続税と所得税の二重課税の問題も言及していることから、相続税と所得税を統合しての二重課税問題を考察することも、立法論としては、あり得よう。

 筆者は本論文では丁寧に、近年訴訟となっている相続税と所得税の二重課税問題を取り上げ、近年の裁判例や先行研究を分析した上で論点整理を行っており、明確な結論を導き出している。また、包括的所得概念のもとでの相続財産の移転時での課税のあり方に触れ、諸外国では遺産税方式のアメリカ、遺産取得税方式のドイツ、譲渡所得課税のカナダとの比較から我が国の税制の位置づけを明確にして独自の二重課税の調整方法を提言しており、独創性があり、その成果は十分に評価に値するものといえる。


論 文(PDF)・・・・・・539KB


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