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矢野 幸治 稿
「債権譲渡担保をめぐる国税徴収法秩序と私法秩序の競合問題」

(大分大学大学院 院生)


 本論文の構成は次のようになっている。
 第1章、第2章において論旨展開の前提となる譲渡担保と国税徴収法第24条の内容について概観している。第3章では旧国税徴収法改正の背景および法改正の基本的考え方を明らかにしている。第4章では改正法の論議のテーマとなった国税優先の原則について、その本質を検証している。第5章では比較法的アプローチとして米国と日本での譲渡担保の取り扱いの違いのポイントを明らかにしている。第6章では債権譲渡担保が拡大している時代背景として債権流動化の流れや法的インフラの整備状況を確認している。第7章から第9章にかけては国税徴収法第24条における債権譲渡担保の問題点を取り上げ、それに関する判例、学説を整理し、その上で取り上げた問題について考察している。

 筆者の主張を纏めると次のようになる。近年において動産・債権等担保融資が注目されており、債権流動化による民法上の秩序の進展が国税徴収権との軋轢を生じさせている点である。その一つは、一括支払システムのスキームにみられる「停止条件付代物弁済条項」の有効性に関するものであり、もう一つは将来債権を含む集合債権譲渡担保に対する国税の優先性に関するものである。

 まず、前者については、原則として、法定納期限後に設定された譲渡担保に対しては国税徴収権が優先するのであって、告知後に譲渡担保を私的に実行して弁済に充てることも許されていないとしている。次に後者については、「譲渡担保財産になっている」時期は、将来債権を含む集合債権譲渡担保設定通知の内容から判断すると、将来債権が発生し債権譲渡担保が実行された後とすることが妥当としている。そもそも、将来債権は未発生である限り取り立てができず、発生してからも、実行通知を行わない限り譲渡担保権者の取り立ては許されていず、完全な第三者対抗要件を具備しているとはいえないとしている。今ひとつの理由は、国税徴収法第24条の立法趣旨及び国税優先の原則に基づく判断が欠如していることをあげている。そして、その譲渡担保設定契約時点で譲渡担保として確定し第三者対抗要件を具備した将来債権であっても、その発生がひとたび法定納期限等を経過した場合には、国税徴収法第24条の適用を受けることが妥当としている。こうした立法の基本的考え方からすると、平成19年の判決において示されたところの判断は、一般私法秩序の枠内では成り立つものの、国税徴収法の秩序には適合しないと判断している。米国法では、将来債権への包括担保権の租税債権に対する優先権に一定の制限が加えられていることを参考にして法定納期限等以前に設定された将来債権を含む債権譲渡担保と国税債権の優先性との調整をどのように図っていくのか、国税徴収法第24条に残された喫緊の課題としている。

 従来、国税債権と私債権との競合関係は、主として不動産を対象とした抵当権のような物件との関係が論じられてきたが、近年では、棚卸資産や売掛債権を担保とする(それらの市場が形成されてきているということであるが)ABLとの関係が重視されてきている。その意味では本論文は時期を得た論題といえる。本論文ではこの競合関係について多方面から検討を行っており、また多くの学説や判例を引用し、さらに多くの文献にも当たっている。

 私法秩序と租税徴収権を如何に調整していくべきかについて、今後のさらなる研究に期待したい本論文であり、極めて高い評価するに値する論文といえよう。


論 文(PDF)・・・・・・556KB


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