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酒井 貴子 著
「法人課税における租税属性の研究」

(株式会社 成文堂 2011年3月刊)

 本書は、法人合併及び連結納税制度における租税属性(資産の取得原価、利益積立金額、欠損金額、会計方法等をいい、特に、欠損金額に着目)について、アメリカ税法の制度と解釈論を考察し、それを我が国の制度の参考にしようとするものである。本書は、2編に大別され、第1編では、法人合併や連結加入等における欠損金額の引継とその制限のあり方について論じ、第2編では、連結納税制度における子会社株式売却損失の控除制限(損失の二重計上の制限等)について考察を進めている。

 このような考察においては、単にアメリカの内国歳入法の関係規範の解説(立法趣旨を含む。)するにとどまらず、関係判例にも検討を加えている。また、このようなアメリカ税法の検討に加え、第1編においては、我が国における繰越欠損金等の取扱いと我が国の連結加入時における欠損金額の引継の取扱いを検討し、日米の両制度の対比を行っている。次いで、第2編においては、連結納税制度においてアメリカが採用している欠損金の損失制限について検討し、我が国も参考にすべきことを提言している。

 我が国の合併を含む企業の組織再編については、伝統的には、圧縮記帳又は帳簿価額の引継ぎによって、主として、含み益の繰延べを図る税制が採用されてきた。これらの制度では、資産の含み損の引継等に問題があるということもあって、平成13年の税制改正において、アメリカ税法を見習って、現行の組織再編税制が採用された。しかし、この制度にも、従来の法人税制との関係において、必ずしも整合性が採られているわけではなく、中途半端であることも否定できない。

 したがって、本書が、この点についてアメリカ税法を仔細に分析、検討し、我が国税制に示唆を与えていることは評価し得る。もっとも、我が国税制には、伝統的税制との関係等について相応の論理を有しているわけであるから、それらを正確に検討しないで、アメリカ税制を是とすることには問題がある。

 また、平成14年の税制改正において導入された我が国の連結納税制度も、アメリカの制度を見習ったものである。したがって、本書がアメリカの制度を具に検討し、我が国がもっと見習うべきことを示唆することも、相応に一理はある。しかしながら、法人税における連結納税制度は、その導入動機が我が国(法人税の減税要求)とアメリカ(租税回避防止)とでは異なるものであるから、それらの問題を踏まえた検討が必要であるところ、それが不十分である。

 ともあれ、本書は、アメリカの法人合併及び連結納税制度における欠損金額の引継制度を具に検討し、それを我が国制度の参考にしようとした力作であると評価できる。


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