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持田 信樹 ・堀場 勇夫 ・望月 正光 著
「地方消費税の経済学」

(株式会社 有斐閣 2010年12月刊)

 本書は、1997年に地方附加価値税として導入された地方消費税について、財政学者の観点から、世界の理論的潮流を踏まえながら、その制度設計のあり方を再検討するものである。

 本書の類書にない特徴は、第1に、実態調査を通じて、世界の理論的・制度的な潮流を踏まえ、地方附加価値税の課税管轄地を原産地原則により決すべきか、仕向地原則により決すべきかを検討していることにある。この点については、地方段階で原産地原則が実施されているブラジルを調査した結果、理論通りの結果が得られていないことから、境界統制がない仕向地原則が理論的にも制度的にも実施可能であることを論証している。

 また、第2に、日本の地方消費税について、都道府県の産業連関表等を用いることによって、仕向地原則の有力な選択肢であるマクロ税収配分方式に即したシミュレーションを行っていることがあげられる。マクロ税収配分方式の執行可能性については、カナダ東部3州で実施されている協調売上税(Harmonized Sales Tax:HST)の実務を検討した結果、実施可能との結果を証明している。

 本書は、上述のような明確な目的意識のもとに、地方消費税のあり方について、実態調査をふまえた実証分析を加え、地方附加価値税制の具体的かつ実施可能な改善の方策を提案している。とりわけ実態調査の点については、カナダ東部3州で実施されている協調売上税方式について深く検討を加えていることが注目される。協調売上税方式は、地方附加価値税の課税方式として、その理論は知られていたが、その執行可能性や問題点については分析結果が示されていなかった。その実証が行われたことは高く評価することができる。我が国の地方消費税は、現行制度では、全国共通の課税標準・税率により計算され、執行も国税庁が担当しているため、問題が表面化しにくいが、やがて消費税率の引き上げと共に、地方分権の観点から、地方独自課税・執行の可否が検討されることになろう。その際には、本書の検討結果は極めて貴重な示唆を与えてくれるものと思われる。

 本書は共著書でありながら、論旨の乱れはなく、そのことから、綿密な打合せの下に、目的意識の共有が行われていることが窺える。論理性、実証性、そして結論の独創性、いずれも優れており、入賞にふさわしい著書であると評価できる。


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