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石田 和之 稿
「資産保有課税における課税標準の選択
  ―固定資産税(日本)とレイト(香港)の比較分析の視点―」

 本論文は、日本の固定資産税と香港のレイト(General Rates)の比較分析を通じて、資産保有課税における課税標準の選択のあり方を、制度分析と実証分析の方法によって検討し、最適な課税標準とは何かを解明しようとした研究である。なお、レイトとは、課税根拠を応益原則に求める課税制度で、固定資産の利用(土地・建物だけではなく、これらと一体的に利用される機械設備なども含まれる)に着目して応益負担を課すものである。

 本論文の結論として、資産保有課税における課税標準の選択は、国や地域のおかれている環境条件(社会、経済、法律制度等)に依存して変化するものであり、一律に課税標準を適用することが安定的な税収を生み出すものではないことを主張している。このような、結論を導くにあたり、制度分析と実証分析の2つのアプローチに基づいて課税標準の選択について以下の通り論じている。

 制度分析のアプローチに基づく検討によれば、資産保有課税において課税標準として資本価格を選択するか、あるいは、レイトにみる賃貸価格を選択するかの判断は、当該税制の目的に依存するものであり、経済社会の環境を考慮した制度設計の立脚点の理論的整合性によって評価されるべきであると主張する。また、実証分析のアプローチに基づく検討では、税収の安定的確保という原則に基づいて、日本では資本価格を課税標準とすることに優位性があることを証明し、他方、香港では賃貸価格にそれを求めることに妥当性があることを明らかにしている。

 本論文は、最終的に、日本において賃貸価格を課税標準とした資産保有課税制度を設けることの妥当性については、これを否定し、それぞれの国や地域の歴史や経済環境を考慮した課税制度の設計の意義を説いている。ここに、本論文の独創性をとくに評価することができるものである。なお、本論文は、租税資料館の研究助成による現地調査(研究滞在先・香港城市大学)の研究成果を反映したものであるという点で実証性にも優れていると判断される。また、指摘するまでもなく論旨は明快である。以上、本論文は、独創性、実証性、論理性という観点から受賞に値する論文として高く評価されるものである。


論 文(PDF)・・・・・・368KB


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