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櫻田 譲 ・中西 良之 稿
「外国子会社利益の国内環流に関する税制改正と市場の反応」

 本稿は、外国子会社利益の国内還流に関する税制改正の影響につき、株価のイベントスタディにより検証したものである。新制度導入のニュース・リリースをイベントとするイベントスタディの結果、本分析は、このニュースに対し、イベント日前後の株式超過収益率(Abnormal Rate of Return)や株式累積超過収益率(Cumulative Abnormal Rate of Return)がポジティブに反応したことを見出している。(具体的には、新制度に関するニュース・リリースに対してイベント日より7営業日前〜3営業日後までに有意水準1%でポジティブな反応が示されたとしている。)筆者らは、この結果を研究開発の活発化に対する期待ではなく、増配に対する期待を意味していると解釈している。

 分析の対象である外国子会社利益の国内還流に関する税制改正は、大企業経営者および経済産業省の強い要請により、具体的な目的や経済的効果が必ずしも明確にされぬまま、決定された経緯がある。前例とされた米国での税制改正については、少なくとも、還流した配当の使途制限を通じ、国内雇用の維持という明確な目的が存在したが、我が国の税制改正においては使途制限等も講じられず、我が国企業の国内投資等に本当につながるのか大きな疑問が呈されていた。従って、本論文が対象とした税制改正の経済的な影響を、実証的に分析することはきわめて重要である。

 分析の結果、リーマンショックの影響を存在という障害はあるものの、株式市場でのイベントスタディにより、改正に対するポジティブな結果を得たことは意義深い。特に、税制改正の企業価値に対する影響を分析するための有力な分析手法ながらも、我が国においては、広く活用されてこなかった株式市場のイベントスタディを用いたことは評価できる。

 ただし、分析結果を増配に対する期待と判断した本論文の考察については、さらなる議論の余地もあると考えられる。本論文の指摘するように、配当を還流させた企業がその資金をそのまま、株主への配当に充当していたとすれば、国内雇用等への効果も限定的ということになり、そもそも目的が不透明であった本改正の廃止・縮減も望まれることになる。それだけに、筆者らのこの分野での今後の研究により、本税制改正が企業行動にもたらした影響につきより深い分析がなされることが強く望まれる。


論 文(PDF)・・・・・・833KB


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