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伴 忠彦 稿
「OECDモデル条約新7条と外国税額控除の制度・執行の見直し」

(税務大学校『税大ジャーナル』 第16号 2011年5月)

 2010年にOECDモデル租税条約第7条が改正され、新たに恒久的施設(PE)が行う内部取引にも移転価格課税の手法を適用するOECD承認アプローチ(AOA)が導入されることとなった。このAOAの規定は二重課税排除規定である同条約第23条A・Bにも適用され、その結果、源泉地国のPE帰属利得が独立企業間価格を超えた場合、その超過分に対応する外国法人税額は居住地国において税額控除の対象としないことが明らかとなった。本稿は、このOECDにおける新たな規定の導入を受け、我が国の現在の外国税額控除をどのように見直すべかを考察したものである。

 著者はまず、現行の外国税額控除制度を規定した法人税法69条の下でAOAによる超過外国税額の控除を、否認できるか検討する。そして、相手国の税が外国法人税に該当する限り、AOA超過外国税額を控除対象から直接除外することはできず、また、AOA超過利得は控除限度額の計算上の国外所得となるため控除限度額を通じた間接的な避否認も無理であると結論づけている。従って、著者としては、国内法における外国税額控除制度を改正する必要があるとして、具体的には(1)控除限度額の観点からの改正として、国外所得金額を定める法人税法施行令142条に「PEが行う事業に係る国外所得金額は、独立企業原則に従って算定される当該PEに帰属する所得を限度とする。」旨の特例的規定を設けるか、AOAの導入に合わせて国内法のソースルールを総合主義から帰属主義に改正する。(間接的アプローチ)とともに、さらに(2)控除対象外国法人税額に該当しないものを定める法人税法施行令142条の3に「PEに課される外国法人税のうち、独立企業原則に従って計算された課税所得を超える部分の所得に対応する税額」を追加する旨の提言(直接的アプローチ)を行なっている。そもそも、AOA超過外国税額の外国税額控除の否認は、「実は源泉地国には課税権がなかった所得」を外国税額控除システム全体から除外する行為であり、そうした観点にたてば、上記のような直接的アプローチと間接的アプローチの二重の否認にならざるをえず、これによって、居住地国固有の所得に対する適正な課税権の確保ができると結論づけている。

 なお、最後の部分で著者はAOA導入前の現在でも、内国法人の海外PEに対する税務調査体制の実態からみて、過大な外国税額控除の発生の可能性があることを指摘し、我が国の歳入の流出について警鐘を鳴らしている。

 本稿のテーマであるOECDモデル新条約におけるAOAとその導入に伴い発生する外国税額控除の取扱いの問題は新条約への改正が極めて新しく、そうした中で、今後二国間で条約が締結される場合の国内法のあり方までを検討している点に先駆的な意義を認めることができる。また、我が国の課税権を確保すべきとする問題意識は鮮明で、執行の現状にまで踏み込んだ著者の提言は、説得力がある。特に、本稿が指摘するように、我が国企業が進出先課税当局との間でのトラブルを嫌い、海外支店の所得計算が所在地国志向になりがちであるという問題は、これまでの移転価格あるいは外国税額控除をめぐる議論が二重課税回避の問題に傾斜しがちであっただけに、深刻に受け止めるべきであり、その着眼の鋭さを改めて評価したい。


税大ジャーナル本文(税務大学校のホームページへリンク)(PDF)・・・・・・846KB


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