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伊藤 裕史 稿
「法人税法における無償取引課税に関する一考察
  ―法人税法第22条第2項益金の額を中心として―」

(名古屋経済大学大学院 院生)

 本論文は、法人税法22条2項が定める無償取引規定の解釈問題を問題意識として設定している。さらに、企業の集団化等に伴って、グループ企業間取引が頻繁に行われると、無償取引自体が不自然ではなくなるといった、当該無償取引規定が企業取引や企業形態の高度化と複雑化が増幅してきている現状に対応しきれないといった問題について、検討を加えたものである。

 わが国の法人税法第22条第2項の規定を米国の内国歳入法典を用いて比較検討し、さらに一段階説及び移転価格税制の国内取引への適用等についても考察して、無償取引が行われた場合の同項の規定の問題点及び今後のあり方についても検討している。

 本論文は、第1章企業会計及び会社法における無償取引の取扱、第2章法人税法における無償取引の取扱、第3章無償取引に関する判例研究、4章米国内国歳入法典482条との比較及び移転価格税制の、4章から構成されている。

 本論文の結論は、「無償取引課税を織り込んだ法人税法第22条第2項の規定が簡潔すぎること、その適用にあたっては解釈に委ねる部分が多いことなどから、オーブンシャホールディング事件のように法の拡大解釈をしてしまうような問題が生じるものと思われる。これらについては、租税法律主義の目的である法的安定性と予測可能性を保障し、同規定の解釈をめぐる争いをできる限り避けるためには、主要な問題点については法令によって立法的に解決するべきであり、さらに、解釈についても通達等でなるべく明確な基準を示していくべきではないだろうか。」としたうえで、米国のIRC第482条はわが国の法人税法第22条第2項の今後のあり方を考えるうえでの一助となるものであると考えられる、と結論付けている。

 本論文の問題意識は極めてクリアであり、論旨も明快であることは高く評価することができる。法人税法22条は法人所得測定の構造の骨格を担うものであり、とりわけ同条2項の無償取引規定は、法人税法の本質を象徴する規定ともいえる。担税力に応じた課税を実現する上で不可欠な規定ともいえる同規定の解釈問題に、裁判例を素材に正面からと果敢に取り組む筆者の姿勢は評価すべきであろう。

 一方で、租税回避の否認問題をどのように位置づけるか、本論文の主題からすると整理する必要があり、この問題についての筆者の考え方を明示しないとすると、結論が飛躍しているとも受け取れることを危惧する。筆者の研究課題として租税回避問題について取り上げることを期待したい。


論 文(PDF)・・・・・・574KB


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