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川上 マチ 稿
「租税回避包括的否認規定導入国における一考察
  ―オーストラリアを中心に―」

(大阪経済大学大学院 院生)

 本論文の目的は、日本と同様の厳格な文理主義を採用していたオーストラリアがどのような経緯で租税回避行為を否認する包括的否認規定を導入し、当該制度にどのような効果や問題点があるのかを検討することを通して、租税回避に関する一般的否認規定を日本に導入する可能性について提言することにある。

 日本の法制度は、租税法律主義の下、原則として文理主義に立脚しているが、税法の解釈適用において、取引の複雑化や多様化により様々な考え方がみられる。代表的なものに、(1)課税減免規定の限定解釈による否認論、(2)私法上の法律構成による否認論、(3)課税減免制度濫用の法理、(4)取引の全体的・一体的観察法などである。ただし、こうした要件事実の認定及び税法解釈適用においても、法律制定の立法過程が公表されない日本の状況では司法に判断が委ねられる部分が大きく、解釈適用の限界が指摘され、一般的否認規定の導入が重要な課題となっている。

 上述のような研究目的に照らして、本論文は、まず、オーストラリアにおける包括否認規定導入の変遷とその内容についてレビューし、それを踏まえてオーストラリアの現行法第4編Aの包括否認規定の適用効果と限界を考察するために判例研究を行っている。以上の議論に基づき、租税回避包括的否認規定の日本への導入の是非について自説を展開している。

 結論としては、オーストラリアの包括的否認規定は、租税上の便益を生み出す商業取引について租税回避行為を幅広く捉える可能性があるので、目的テストによって客観性・確実性のある判定を行い、さらにルーリング制度やプロモーターペナルティ制度等の周辺制度の整備を進めることで、否認効果を高めるように工夫されていると評価しているが、当初の研究の提題である日本への導入については最終的には否定的であり、現状の個別規定と司法制度による対応が望ましいと結んでいる。

 金融の自由化や国際取引の普及により、様々な新種の節税商品が誕生している現状では、これらに対する個別否認規定整備していくことは困難である。その意味で、日本においても包括的否認規定を導入すべきであるという意見が強く提唱されていることから、本論文の問題意識や論証は重要な意義を有している。オーストラリアの法改正の経緯は綿密に検証されていることから、本論文の資料的価値も高く、包括的否認規定の導入の是非に関する研究に果敢に挑戦した本論文は高く評価されるものである。


論 文(PDF)・・・・・・609KB


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