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河原 秀樹 稿
「法人税法によるDebt/Equity認定基準と関連企業グループ間における支払利子損金算入制限規定創設の必要性について
  ―クロス・ボーダー・ハイブリット・インスツルメントを利用した租税裁定に対する租税条約としてのアプローチと法人税法としてのアプローチ―」

(名古屋経済大学大学院 院生)

 本論文で筆者は、負債と資本、DebtとEquityの両者の性質が混在する証券(ハイブリット・インスツルメント)から生じるイールドの課税上の取扱いを考究し、その法人税法上の取扱いに関して、関連企業間での支払利子損金算入制限規定の創設を提言する。

 本論文は4章で構成されるが、第1章では、わが国法人税法の考え方や条文構造から、株主を会社の所有者とみなして法人所得に課税するシステムの状況や基本的考え方を考察する。筆者は、法人税法独自のDebt/Equity認定基準(イールド原資の株式性と社債性の判断基準)を明文で定める必要があることや、法人税法が法形式に従ってDebt/Equityの分類をする必然性はないことを強調し、Debt/Equityに中立的な法人税制を提言する。第2章では、ハイブリッド・インスツルメントに対する課税上の取扱いをめぐるアメリカ法制の沿革的検討を行う。第3章では、ハイブリッド・インスツルメントに対する対抗手段としての観点から過少資本税制を中心に取り上げ考察し、それでは十分な対抗手段となり得ないことを強調する。とくにアップストリーム・ローンの場合は規制の射程外になってしまう問題があるが、著者は、過少資本税制をアップストリーム・ローンに対抗できるよう改正するか、法人税法中に関連企業グループ間取引における支払利子の損金算入制限規定を設けることを提案する。第4章では、ハイブリッド・インスツルメントに対して国際的にどう対処すべきかを検討し、租税回避としての否認を二国間租税条約に書き込むことでの解決を提言する。

 本論文では、近年、主要先進諸国でも新手の資金調達手段として着目されているハイブリット・インスツルメントが取り上げられ、その仕組みを活用した(国際的)租税回避の手口と、それに対する対抗策のあり方が論じられている。131頁にも及ぶ力作であり、内容的にも法人課税の本質論から租税条約を活用した租税回避行為までと、多岐にわたった課題についての検討がなされている。ハイブリット・インスツルメントの発行事例等の紹介にあたっては、税務にとどまらず、その根底にある基本的論点にも目を配るなど、幅広い分野にわたって丁寧な検討をしており、論文の内容に一層の厚みを加えている。外国の事例や租税条約の解釈をめぐる検討に際しても、原典にあたって調べようとする筆者の真摯な姿勢が示されている。着眼の良さと共に、難しい問題に正面から取り組もうとした筆者の意欲、自分の見解を積極的に示そうとする姿勢など、評価すべき点が多い。文章構成や表現上の問題で筆者の伝えたい内容や論理がストレートに読者へ伝わらない嫌いがあったり、結論部分で飛躍した論議をしている印象があったりはするものの、奨励賞としての資格は十分にある好論文である。


論 文(PDF)・・・・・・935KB


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