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中島 俊介 稿
「私的年金税制の一考察」

(大阪経済大学大学院 院生)

 本稿は、我が国の企業年金と個人年金から構成される私的年金制度とその年金税制の現状を検討し、当該年金税制のあり方を論じるものである。本稿の構成は、次のようになっている。

 1.我が国の年金制度・年金税制
 我が国の私的年金制度を概観し、それに対する拠出、運用、給付の各段階における税制を検討し、それらの問題点として、各私的年金間において、整合性を欠き、ポータビリティが不十分であることを指摘する。

 2.先行研究
 私的年金税制の問題点を検討した先行論文である森信茂樹「金融所得一体課税の推進と日本版IRAの提案」及び佐藤英明「退職所得・企業年金と所得税」を検討し、両論文の問題点と限界を提言する。

 3.米国の年金制度・年金税制
 米国の年金制度の中核となっているIRA等を検討し、同制度においては、転職等の際のポータビリティが確保されていることを指摘している。

 4.我が国の今後の方向性
 以上の検討を踏まえ、税制適格個人年金を個人型確定拠出年金に統合することによって私的年金制度の整合性を図り、かつ、個人型確定拠出年金の加入対象者の範囲を拡大することによって、同年金にポータビリティの受け皿としての役割を担わせることを提言する。

 以上のように、本稿は、我が国の私的年金制度とその税制の現状と問題点を検討し、それを米国制度と対比させ、かつ、先行論文を検討した上で、我が国の私的年年金制度と税制の方向性について提言するものである。我が国の私的年金制度とその税制については、種々の問題があるので、それを検討し、日米比較を行いながら、今後のあり方について提言したことは評価できる。また、その検討、分析も解り易く、結論に至るまでの論旨の展開にも相応の説得力がある。

 しかしながら、日米比較を行うにしても、両国における公的年金制度の差異とそれらとの関係の分析が不十分である。また、先行論文についても、指摘した2編に限られるわけではないが、何故2編にしたのか、他の論文が不明であったのかも定かではない。更に、その提言については、個人型確定拠出年金の加入対象者の範囲を拡大するにしても、その具体的な範囲やその手法も明らかでなく、税制上優遇することと公的年金制度との関係等についても十分に検討されていない。これらの点についても、今後一層検討されることが望まれる。

 いずれにしても、自助、自立社会の重要性が指摘される中、その手段としての私的年金税制について本稿で指摘されていることは重要である。


論 文(PDF)・・・・・・577KB


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