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根岸 英人 稿
「相続税における居住ルール
  ―相続税法上の住所概念の検討を中心として―」

(千葉商科大学大学院 院生)

 相続税の納税義務者の判定には居住者概念の明確化が不可欠であるとの問題意識に基づいて、本論文では次の4点が解明すべき問題として設定されている。

 第1は、居住者の判定基準である住所の認定が困難であること、第2の問題点は、相続税法に規定されている居住ルールは現代社会の実情に見合ったものであるかどうかということ、第3の問題点は、国際的調和という観点である。各国の居住ルールが異なると、二重居住者による二重課税の問題、あるいは課税の空白といった問題が生ずることにあることが想定されること、第4に、日本の居住ルールの射程の問題といった、点について、著者はあらかじめ問題意識を集約し、以下の4章より論文構成がなされている。

 第1章 序論
 第2章 日本の相続税法における居住ルール
 第3章 日本の居住ルールの特徴と問題点
 第4章 相続税条約における居住ルールの役割
 第5章 結論

 第1章は国際相続の増加、租税回避、国際的二重課税の問題を具体的に提示し、第2章では、我が国の相続税法における居住ルールについて検証を行っている。次いで、第3章では、日本の居住ルールを各国の国内法における居住ルールと比較し、日本の居住ルールの問題点を明らかにし、最後に第4章では、相続税租税条約における居住ルールについて検討がなされている。

 結論として、日本の国内法である相続税法が住所について定義規定を用意していないために、民法からの借用概念によっていることが租税法律主義の予測可能性を浸食しているから、法定して明確性を確保すべきであるとの結論を導出している。

 本論文の問題意識や各章の記述は興味深いものがあり、さらに、外国文献も検証し、前向きな研究姿勢が論文の随所に反映されていることは高く評価できる。住所概念の明確性の確保いかに図るかは、租税回避の否認の問題との関係で極めて重要な問題である。武富士事件に見られるように租税法上の重要論点の一つといえる。この論点に正面から論文といえよう。

 論文中にとりこまれた表や図も外国文献から作成されたようである点も努力がみられる。

 ただ、本論で検討された内容をふまえた結論が租税法律主義の要請から住所概念を単に法定すべきであるとしたのでは、当然すぎることをあっさり確認しただけにとどまり尻つぼみとなった感じは否めない。

 筆者には、具体的に法定する場合にいかなる法文を用意することが国際的にみて妥当といえるのかについても、今後の研究課題として取り組むことが期待される。


論 文(PDF)・・・・・・1.01MB


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