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髙橋志朗 著
「わが国税務会計の発達とシャウプ勧告」

(東北学院大学経営学部教授 同文舘出版(株) 平成23年8月)

 本著では、「シャウプ勧告」を、わが国の戦後の税務会計発展の原点と位置づけ、2部構成をとっており、第1部では、「シャウプ勧告」がわが国税務会計の発展に及ぼした影響、並びにその歴史的意義を明らかにし、第2部では、シャウプ博士の法人税改革の理想像と、その実現に不可欠な税務会計改革の課題とを明らかにしている。

 まず第1部の第1章では、「シャウプ勧告」がわが国の税務会計の発展に及ぼした影響をいち早く指摘した長谷川忠一教授の先駆的業績と「シャウプ勧告」の歴史的意義を指摘した武田昌輔教授の業績を紹介している。第2章では、詳細な会計改革案を作成、提案したシャウプ使節団の目的と、その会計改革案の特色を検討し、企業会計並びに税務会計の改革案としての「シャウプ勧告」の意義を明らかにしている。第3章では、「シャウプ勧告」が近代的所得計算基準を盛り込んだ画期的税法改正へと及んでいく過程を明らかにしている。第4章では、昭和42年以降の税務会計の発展を検討している。第2部の第5章では、「シャウプ勧告」発表前夜までのわが国法人税の歴史を概観し、その特色を明らかにしている。第6章では、「シャウプ勧告」の法人税改革案の特色と問題点を具体的に検討し、シャウプ博士のねらいが、「理想の制度」の実現でなく、より簡潔な「次善の制度」の定着に置かれていた事実を明らかにしている。第7章では、「シャウプ勧告」以降のわが国法人税制度の歴史的変遷を検討し、現在、「次善の制度」すら未だに定着していないことを指摘している。第8章では、「シャウプ勧告」において示唆された「理想の制度」の意味を具体的に明らかにしている。なお、ここでは「シャウプ勧告」の基本目的や基本構想といった重要事項に関する博士の証言を、筆者との対談の記録をもとに、可能な限り紹介している。第9章では、法人税制度の抜本改革に伴う会計基準改善の必要性を説いたシャウプ博士の論文をもとに、博士の不変の理想を明らかにしている。

 筆者は長年に亘って「シャウプ勧告」を研究され、その集大成として本著が刊行された。

 筆者は必ずしも「シャウプ勧告」が正当な評価がなされてこなかったことに反論を試みている。「シャウプ勧告」を「理想の制度」としてではなく、「理想の制度」として発展しうる可能性を秘めた「次善の制度」として位置づけ、「シャウプ勧告」の詳細な分析を試みている。また、筆者はシャウプ博士と4回会談し、その内容をも十分に考察して、法人税制度の抜本改革に伴う会計基準改善の必要性を説いたシャウプ博士の論文の理論解明を試みている。ただ単に「シャウプ勧告」のみを取り上げて考察するのでなく、シャウプ博士がアメリカで勧告した「アメリカ版シャウプ勧告」と比較検討して、「シャウプ勧告」の内容の深層に迫っている。わが国の確定決算主義の生成に影響を与えたと思われるシャウプ博士の論文の内容を紹介し、考察していることは、「シャウプ勧告」の単なる紹介の著書とは全く異なり、新たな「シャウプ勧告」の全体像の解明を臨んだ出色した著書といえよう。


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