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浅井俊輔 稿
「所得税法への給付付き税額控除の導入に関する研究
 ―低所得者及び有子低所得者への配慮の視点から―」

(立命館大学大学院 院生)

 本論文はいわゆる給付付き税額控除の導入を考察したものである。本論文では、まず所得格差・貧困の増大に言及し、低所得者および有子低所得者への対応が不可避だが、人的所得控除がこれらの者に十分対応できていないとし、給付付き税額控除導入の必要性を説く。導入の反対論については、人的所得控除が課税最低限の下の低所得者に対応していないと反駁している。その上で、森信「日本型児童税額控除」案と阿部「ワーキング・プア対策としての給付付き税額控除」案に加え、英国、ニュージーランド、米国等の事例を検討している。最後に、基礎税額控除と児童税額控除の一体的導入が望ましいとした後、著者による提案の具体案を紹介している。

 本論文は、最近、注目されている給付付き税額控除制度の議論について考察している。著者の指摘するように、格差拡大や貧困に対する対策が必要なことには多くの論者の同意があり、著者は海外の事例や我が国の論者によるいくつかの提案についても詳細に紹介している。そうした先行研究のサーベイは必ずしも十分網羅的ではないものの、広く先行研究を参照しようとした努力は評価できる。また、最後に著者による具体的な提案を行ったことも、意欲的な取り組みとして評価できよう。

 他方、著者の議論には問題点も多い。著者が給付付き税額控除が不可欠とする論拠は、人的所得控除が課税最低限の下の低所得者に対応していない点に尽きる。これに対しては、低所得者対策は税のみでなく、給付等を含めた政策全般で対処する方が望ましいという反論があるにもかかわらず、著者は所得税制内のみでの対策がどうして不可欠なのかを十分論じておらず、論理的な議論がなされていない。

 また、著者独自の具体案が、なぜそうした案になるのかにつき十分に詳細な説明はなされていない。そうした具体案を作成するためには、実は低所得者対策の及ぼす影響等に関する膨大な経済学的分析の先行研究の結果を踏まえる必要があるが、残念ながら本稿では、そうした文献については十分な検討はなされていない。

 そうした不十分な点がありながらも、低所得者対策のあり方につき独自の問題意識を持ち、広く文献を参照し、最後には著者の独自の具体的な提案を行ったことについては、意欲的な研究として評価でき、本稿は、奨励賞に値する論文と考えられる。今後、より幅広く関連文献のサーベイを行うとともに、著者自身の提案につきより詳細な理由の説明ができるよう、さらに研究を進めることが期待される。


論 文(PDF)・・・・・・1.3MB


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