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浅野祐二 稿
「譲渡所得に対する二重利得課税方式の採用」

(立教大学大学院 院生)

 本論文では、譲渡所得の本質をどのように捉え、どのような課税方法を採用すればよいかについて検討を行い、望ましい課税方法を明らかにすることを目的としている。

 譲渡所得の本質を巡っては「増加益清算説」と「譲渡益所得説」との対立があり、通説としてはキャピタル・ゲインに対する課税の「増加益清算説」によるべきといえるが、所得税法では譲渡所得課税の収入金額は増加益清算説から導き出される時価評価額によらず、実際の収入金額によるものとされてきている。しかし、無償譲渡の場合に課税を行うみなし譲渡は「増加益清算説」によって理解した方が説明しやすいことは確かであり、このように考えれば、譲渡所得課税の本質は、制度創設当初の増加益清算説から、様々な改正を経て譲渡益所得説へその重点が移ってきたとはいえ、現在においても、依然として増加益清算説と譲渡益所得説の考え方が混在しているとみるべきであるとしている。

 そこで、譲渡所得に対する課税のあるべき本質論は、「増加益清算説」と「譲渡益所得説」がそれぞれ主張する基本的な性格を併せ持った租税であると考えることが適当であるとしている。そして、この本質論に即した課税方法であり、かつ、現行制度における問題を解決できるのが二重利得課税方式としている。すなわち、譲渡対価の金額のうち、キャピタル・ゲインの部分は譲渡所得として課税し、キャピタル・ゲインを上回る部分(時価との差額)は雑所得として課税するのである。また、譲渡損失はキャピタル・ロス部分とキャピタル・ロスとの差額部分とに分けて、それぞれ異なった取り扱いをするものである。すなわち前者においてはキャピタル・ゲインの部分においては累積所得を考慮して1/2方式を適用し、キャピタル・ゲインを上回る部分については1/2方式を適用していない。このようにすることによって、キャピタル・ゲインの部分については増加益清算説に基づくことになり、キャピタル・ロスとの差額部分については譲渡益所得説に基づくことになるので、現行制度の中に混在する二つの本質論を合理的に棲み分けることができるとしている。

 キャピタル・ゲインの部分において1/2方式の1/2というのが適切であるかについては、さらに十分な考察が必要であるとしても、二重利得課税方式をこの分野に適用して「増加益清算説」と「譲渡益所得説」の対立を考察していることは斬新であり、説得力のあるものとして十分に評価できよう。


論 文(PDF)・・・・・・781KB


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