公益財団法人租税資料館


トップページ>>租税資料館賞>>第21回入賞作品>>「関連者間の保険取引に係る課税問題についての一考察」
戻る 次へ

芦原 亮 稿
「関連者間の保険取引に係る課税問題についての一考察
 ―支払保険料の損金性を中心に―」

(立命館大学大学院 院生)

 本稿は、国外に設立したキャプティブ(自家保険会社)に支払った保険料の損金性について、米国における対応を踏まえ、わが国における望ましい課税のあり方について考察したものである。

 第1章では、キャプティブに支払った保険料の損金性が、我が国では、リスク移転・分散という経済的性質ではなく、掛捨て型か積立型かの峻別基準によって判断されるため、国外キャプティブと掛捨て型保険取引を行う限り、保険料の損金算入が認められ、結果として我が国の課税ベースを浸食することになるとの問題提起を行っている。

 第2章では、キャプティブ形態に応じて保険料の損金性を判断する米国の議論を考察している。本稿では、キャプティブの形態をシングル・ピュア、シングル・オープン、グループの3つに分類した上で、保険料の取扱いを分析している。保険料の損金性をめぐるIRSの見解や判例法の変遷過程を整理して紹介している。

 第3章では、関係会社間で支払われる保険料について、わが国の望ましい課税のあり方を検討し、立法的措置の導入の必要性に言及している。日本企業が有する大部分のキャプティブ形態がシングルであることを踏まえ、我が国でもシングル・オープンへの保険料については、米国と同様に外部リスク引受割合による損金算入制限基準を検討すべきであると主張している。

 近年、企業が抱えるリスクは国際化、多様化、複雑化し、それに伴い、保険会社への付保が困難になるなど、自社やグループ内でリスクを管理する必要性が生じている。我が国の法人の中にも、そのリスクヘッジために、国外にキャプティブを設立する例が見受けられるようになった。しかし、国境を越えた関連者間の保険取引が行われた場合には、支払保険料は国内法人の課税所得計算上損金に算入され、結果として我が国の課税ベースを浸食することになる。

 筆者は、キャプティブへの支払保険料の損金性について、米国の例にならって、シングル・ピュアへの保険料は、我が国においても損金算入を制限する規定を設けるべきであり、シングル・オープンの場合は外部リスク引き受け割合を基礎とした一定の形式基準を示した別段の定めを設けるべきであるとする。それは、平成24年度税制改正において導入された「過大支払利子税制」と同様に、国外キャプティブへの支払保険料の問題にも、国外に課税逃れが発生する可能性が否定できないからであり、法人税法における別段の定めをおいてこれを行うべきであるとの提言を行っている。

 本稿は、キャプティブに対する支払保険料の損金性について、我が国の課税上の問題点を指摘し、米国における課税実務と判例法の変遷を丁寧に整理する中から、我が国における望ましい課税のあり方を考察したものである。論点の整理の仕方、説得力、これまでの応募論文にはなかったテーマであること等、総合的に判断して、奨励賞に値する論文であると判断するものである。


論 文(PDF)・・・・・・657KB


戻る 次へ




Copyright (c) SOZEISHIRYOKAN. All Rights Reserved.