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安達友信 稿
「中国進出日系企業に係る課税問題に関する一考察
 ―移転価格税制を中心に―」

(明治大学専門職大学院 院生)

 中国は課税の強化策の一つとして移転価格税制の整備強化を図っている。中国に進出する日系中堅の中小企業は中国に進出する場合には中国の移転価格税制による課税強化策による課税上のリスクに見舞われる。そこで、中国の移転価格税制の法構造と展開を意識し理解しておくことが急務であり、それが課税上のリスク回避につながるとの問題意識から、中国の移転価格税制上の問題点について整理検討することを本論文は目的としている。

 具体的には、次の4章より本論文は構成されている。
  第1章 中国への投資と中国税制の概要
  第2章 中国の移転価格税制の概要と特徴点
  第3章 中国進出中堅中小企業に係る移転価格税制問題の考察
  第4章 日中移転価格税制の在り方及び中堅中小企業の日中移転価格税制の
       対応に関する提言

 第1章において中国の税制一般の概要を整理したうえで、第2章では本論文の中心的課題である移転価格税制の概要を整理している。特に、独立企業間価格の算定方法や移転価格に関する同期資料の記載内容、移転価格調査と調整、移転価格に関する税務調査、APA、そして、対応的調整と相互協議に関して中国と日本の比較制度的な検証が行われている。比較制度憲章により中国の制度の特徴を明らかにするという手法が採られている。第3章では中国の関連者間取引における取引価格が独立企業原則に適合していることの立証責任と救済制度、そして、移転価格税制の適用と行為計算否認規定及び寄付金課税問題についても言及していることは興味深い。

 第4章では問題点の指摘がなされているが、基本的には中国では税務行政が恣意的になされる傾向が強く、税務行政の法的安定性と予測可能性の確保が強く求められることが指摘されている。

 本論文の特徴は、執筆者の実務経験に基づいて極めて実務的な紹介がなされていることである。随所に中国における制度の現状を明らかにする工夫がなされており興味深いと同時に、中国の税務行政の在り方も含め税制の特徴を移転価格税制に絞って検証している点は評価できる。

 一方、筆者の実務経験に基づく中国の現行制度の現状解説に終始し、理論的側面や具体的な紛争事例を掘り下げるなど研究の理論的掘り下げについては課題を残すともいえるが、中国進出企業が直面するであろう移転価格税制上の問題点を十分に整理されており大いに参考になる。

 本論文が極めてクリアな実務的視点からの問題意識の下に、中国の移転価格税制の問題点を整理検討されていることは高く評価できよう。


論 文(PDF)・・・・・・891KB


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