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竹之内和紀 稿
「退職所得課税の問題点と解決策
 ―新たな平準化措置の検討を中心として―」

(新潟大学大学院 院生)

 本論文で筆者は、税法上優遇的な取扱いが定められている退職所得を取り上げ、退職所得課税制度が内包する問題点を検討し、解決策を模索する。具体的には筆者は、労働法上と税法上の退職概念の同異性を念頭に置きながら、退職所得の範囲の明確化や退職控除制度の合理化を図るための検討を行う。その結果、筆者は新たな課税方式の提言をする。

 本論文は4章からなる。第1章では、退職所得課税制度の概要と沿革を紹介、退職所得該当性の判断基準を探り、退職所得の範囲と給与所得との区分などには問題があることを指摘する。第2章では、税法上の「退職」の意義を考える参考として労働法上の退職金の性格と退職概念を考察する。第3章では、税法上退職所得として取り扱われる各種の金員の性質等に応じてそれらの給与所得性を検討し、税法上の退職概念を明らかにしようとする。そこでは、通常の形態の退職給与と併せて、短期定年制や前払い退職金、役員の分掌変更など、近時の実務や裁判例などでその処理が注目されている諸論点が取り上げられている。第4章では、必ずしも「公平であるとは言えない」退職所得課税制度の問題点に鑑み、退職所得の廃止、年齢や金額の制限、分離課税の是非、退職所得控除の見直し、2分の1課税の妥当性と新平準化方式の導入等の諸論点を検討する。筆者は、結論として、勤続10年以上の場合に限り、10分10乗の計算方式による平準化措置を提唱する。

 全編を通じて筆者の意識には、終身雇用制度の下では老後保障的性格をもっていた退職金の性格が近時においては変化しており、支給形態も多様化しているという認識がある。とくに勤続年数に関係なく2分の1課税が適用される現行制度に対する不公平感を背景として、退職所得課税における「新たな平準化措置」の導入を提言・検討する。本論文の価値は、まさにその点にある。

 筆者の論文から、筆者がこのような論文のアイデアを得た背景には、いくつかの先行業績が存在し、それらの業績から筆者がヒントを得たことが読み取れる。そうとは言え、この論文を通じて筆者が提起する具体的な提案は、筆者自身のアイデアと考えて良い。退職所得への課税問題という比較的地味なテーマを取り上げながらも、労働法上の退職金の定義から始めて退職金課税の諸問題に論究していく論理の展開の仕方には説得力がある。また、統計データを用いた実証分析手法の着実さや判断をするに際して筆者が示す冷静な対処の仕方、公平な課税と現実の執行とのバランス感覚など、評価されるべき点が多く見られる。

 筆者自身は、この論文を通じて、年金形式での退職所得支払いに対応する租税制度のあり方を探ぐることを目標としている。そして、この論文は、筆者が将来的にさらなる成果を挙げることを期待させるような、好個の作品となっている。


論 文(PDF)・・・・・・1.12MB


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