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山本純子 稿
「新しい減価償却制度の提案」

(神戸学院大学大学院 院生)

 減価償却方法は、定額法、定率法をはじめ、級数法、倍率法、生産高比例法、複利還元法、年金法、減債基金法等多数あるが、法人税法上、法定償却方法とされているのは定額法、定率法および生産高比例法に限られている。それ以外の償却方法については承認申請手続きが必要であり、各企業の実態に合った償却ができないという問題がある。

 本論文の目的は、より実務的に簡便で、かつ実態に近い減価償却方法について研究し、制度上導入可能な減価償却方法を提案することである。

 筆者は、明治以降、現在までの減価償却制度の沿革と税制改正について、論文の半分を割いて詳細な研究・分析を行っている。さらに、企業会計、会社法、税法、それぞれにおける減価償却の目的、規定について整理し、減価償却方法を分類した上で、それぞれの制度会計における減価償却方法の特徴と計算方法について、償却方法ごとに償却額や残存価額の比較を行い、それぞれの利点と問題点を指摘している。

 本論文では、税法上の減価償却方法に必要とされる条件として次の7つを挙げている。それは、①汎用性、②外部証拠依拠性、③明確性・簡便性、④実務実効性、⑤変化への対応性、⑥整合性・単一性、⑦早期回収性である。

 この要件に照らして見ると、現行の法定償却方法は、償却方法が複数あり、選択および変更が可能な点も問題であり、前述の整合性が欠如している問題点のほかにも汎用性の欠如や恣意性の排除不足も問題点として挙げられる。このように、現行の法定償却方法は問題点を多く持っている。

 そこで、筆者は、法定償却方法に捉われることなく、企業にとってより実態に近く、事務的負担も少なく、税法上も企業会計上も導入が現実的な方法として、新しい減価償却方法「公差選択式級数法」を提案している。これは、定率法と定額法の中間的な償却が可能となる級数法を応用した減価償却方法であり、用いる公差を1以外にすることにより、実態との整合性を高めることが可能であるという。

 定率法か定額法の選択という議論でなく、償却方法を唯一、本方式に定めることにより、償却方法の変更による恣意性を排除することができる上に、公差を様々に変化させることによって、定額法や定率法に類似したものに近づけることも可能であるとして、それぞれの計算結果の比較をグラフにして示している点は、実証的であり説得力がある。

 しかし、公差選択式級数法は、従来のように、償却率表を用いた計算方法によると、計算が複雑で膨大な手数を要することになる。筆者は、コンピュータ化が進んだ現在においては、数式を用いて定義する法改正及びシステム構築を行うことで、計算の複雑化に対応することは可能であると論じているが、安易にすぎないだろうか。また、この方法を末端の中小企業にまで強制した場合に生じる問題点について言及していない点等、その実現可能性には疑問が残るところではある。


論 文(PDF)・・・・・・1.51MB


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