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谷口 智紀 著
「知的財産権取引と課税問題」
 (株)成文堂 平成25年4月刊
(島根大学法文学部法経学科准教授)

 本書は、知的財産権取引に係る課税問題を包括的に論じている。まず知的財産権取引の私法上の法律構成を概観した後、課税問題につき考察する。我が国の税制では、知的財産権の譲渡は、他の資産の譲渡と同様に取り扱われるため、課税庁の裁量や通達も基づき対処しているという問題があると指摘する。本書は、租税法律主義の視点を強く打ち出しており、課税上の不合理な取扱いの是正は、立法でなされるべきで、解釈や租税法独自の法律構成での対応は批判されるべきとしている。そうした観点から、いくつかの判例を批判的に考察している。

 本書の後半では、米国租税法での知的財産権取引を巡る課税問題を検討している。特に譲渡益の「認識」と「実現」を重視し、さらに、米国租税法では、所得の実現の問題を憲法上の問題と捉えているとし、実現概念は連邦議会の立法によって変容せず、連邦議会の立法は、実現した所得を租税法上で認識するか否かという認識の問題にのみに係るものと断ずる。また、米国における水平的公平を巡る議論を紹介しつつ、知的財産権取引の課税に関する立法を行う場合でも、水平的公平の観点からの評価を用いて、立法府の恣意性を排除した立法を行うべきと結論づけている。

 本書の取り上げる知的財産権取引の課税問題は今後、きわめて重要となる問題である。また、本書は、税法のみならず、我が国の知的財産権関連法、米国の租税法、さらに米国における租税の水平的公平を巡る議論まで幅広く紹介しながら、議論を行っていることは高く評価できる。


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