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笹川 篤史 稿
「住居の所有関係別にみた消費税負担に関する考察」
 長崎大学経済学会発行
  『経營と經濟』  平成25年9月(第93巻1・2号)
(長崎大学経済学部准教授)

 本論文は、消費税の増税を控えてその逆進性が問題とされているところ、総務省の「家計調査」を基にして、収入階級別に対応した持家と借家の各世帯別に消費税負担割合を比較し、それぞれの逆進性の程度を実証しようとするものである。その論文の主要項目は、次のとおりである。

 1.家計調査年報による収入階級別にみた家賃地代支払額
 2.持家世帯と借家の支出内訳の比較
 3.統計成果物の特徴
 4.借家世帯及び持家世帯の消費構造の比較
 5.住居の所有関係別にみた消費税負担割合
 6.「家計調査年報」を用いた先行研究との比較

  以上の検証の結果、次の結論を導いている。

 [1] 借家世帯の中における比較の方が逆進性の程度が少なくなっていることが明らかになった。
 [2] 借家・持家の全体で消費税負担割合を借家世帯の低階級と比べれば逆進性の程度が縮小することが明らかになった。
 [3] 年間収入・実収入、経常収入、勤め先収入について、第X階級が第I階級の何倍あるかを比較すると、年間収入が6.73倍、実収入が4.71倍、経常収入が4.75倍になった。このため、年間収入を分母として用いた方が第X階級と第I階級の差(逆進性)が大きく推計される可能性が明らかになった。

 以上のように、本論文は、消費税が逆進性をもたらすという問題提起に対し、その実態を「家計調査」を基にして実証するものであるが、各世帯の収入階級別とそれに対応した持家と借家によって消費税の負担比を比較し、その逆進性を実証したところに特色がある。これにより、家賃が非課税とされているため、持家という資産を持たない世帯の消費税負担額が軽減されており、一定の逆進性の緩和につながっていることも確認された。

 このような検証においては、数多くの数量的分析を行い、具体的な数値によってそれぞれの逆進性の実態を明らかにしているので、その実証性について高く評価できる。

 しかしながら、著者も認めているように、消費税の課税において家賃が非課税で持家取得が課税であれば、借家世帯の消費税負担比が低くなるのは当然のことでもある。よって、そのことのみを実証するのみでは、平凡な結論を導いたものにすぎないとも言える。よって、この実証結果を基にして、今後、消費税の課税のあり方について、一層の研究が望まれる。


論 文(PDF)・・・・・・336KB


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