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宮崎 綾望 稿
「WTO法と税制の研究―国際課税制度の再考に向けて―」
 公益社団法人 日本租税研究協会発刊
  『租税研究』  平成24年4月(第750号)
平成24年5月(第751号)
(京都産業大学法学部准教授)

 本論文は、WTO(世界貿易機関)の傘下にあるGATT(関税および貿易に関する一般協定)およびGATS(サービス貿易に関する一般協定)において、所得税や法人税のような直接税にGATTの規定がどのような適用を受けるかを論証した研究である。著者は、本論文をすでに『租税研究』の750号(平成24年4月)と751号(平成24年5月)に前篇と後篇として公表されている。

 前篇では、GATTについて検討を加えている。GATTは、加盟国の産品またはサービス提供者に等しい待遇を付与することを義務づける最恵国待遇原則、輸入品に対して国内産品よりも不利な待遇を付与することを禁じる内国民待遇原則を定めている。これらの原則は、関税と同等の効果を持ちうる酒税や消費税などの間接税には適用されるものの、所得税や法人税などの直接税には適用されないということが従来の一般的な理解であった。ところが、米国のETI税制事件において国家が直接税を用いてモノの貿易に影響を及ぼすことが可能であることが明らかとなり、直接税にもGATTの規定が適用されうることが示された。

 1994年にはサービス貿易を対象とするGATSが盛り込まれたことから、先進国の重要な歳入源である所得税や法人税がWTO法違反となるのではないかということが重大な関心事となっている。後篇では、そのような観点からGATSの規定について検討している。GATSは、サービス貿易に影響を与えうる措置を広く対象としており、直接税もその対象となることを明らかにしている。具体的には、国際課税制度における居住者と非居住者の区別や内国法人と非居住者の区別が内国民待遇義務に反しないか否か、締約相手国ごとに異なる二国間租税条約に基づく配当、利子またはロイヤリティに対する源泉所得税の税率が最恵国待遇義務に反しないか否か、タックス・ヘイブンを利用した租税回避を防止するための国内措置が最恵国待遇義務違反とならないか否かについて検討されている。

 以上の検討要旨からわかるように、WTOならびにGATTおよびGATSは、それらの名称通り貿易やそれに関する関税に協定であると理解されがちであるが、それらの協定が加盟国の直接税に影響を及ぼすという問題点に果敢に挑戦し、体系的に論じたことは、きわめて独創性に富むものであり、論理性と実証性についても一定の評価を与えることができる。WTO下において、加盟国の直接税が規制を受けることになると、課税権が国家主権の重要な要素であるため国家主権との関係が問題となるが、今後はその解明が望まれるところである。


論 文(PDF)・・・・・・1.16MB


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