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矢田 公一 稿
「生命保険の金融的機能と課税上の課題
   ―法人税法におけるオンバランス化への試み―」
(国税庁長官官房税務相談官/筑波大学大学院 院生)

 本論文で筆者は、法人を保険契約者とし、その役員又は使用人を被保険者とする生命保険契約(企業保険)については、その金融的機能面からみて、その種の保険契約を締結していること自体に資産価値を見出し課税すべきではないかと考え、そのための立法的措置を検討しようとする。

 本論文の全体は、四章から構成されている。第1章では、保険商品が多様化し、貯蓄性の高い保険商品が登場してきているにもかかわらず、課税上十分な対応ができていない現状を示唆する。第2章では、生命保険契約の意義と機能を検討、保険契約のもつ財産的価値が、現行制度の下で保険契約者によって利用されうる状況に言及する。第3章では、貯蓄的要素から金融化へとの生命保険契約の機能的転換状況を踏まえて、期間所得の恣意的操作の可能性や、法人から役員・従業員への資金移転など、課税上、種々の弊害が生じることを指摘すると共に、従来のわが国や米国における議論を紹介、課税上の弊害を生じる一因が、オフバランスを可能にする企業保険商品の登場を許していることにあると結論づける。第4章では、これまでの議論を踏まえて、生命保険契約をめぐる課題や弊害の対応策として、生命保険契約のオンバランス化を提案し、その為の具体的方策を検討する。

 この論文全体を通じて筆者は、近時において、その多様化・金融化に向けて機能変化への状況が著しい生命保険契約を取り上げて、その貯蓄的要素に着目しながら課税上の課題を探っている。とくに筆者の意識にあるのは、生命保険商品が貯蓄性をもつと同時に、法人税法上、企業の保険料負担が損金として扱われるにもかかわらず、貸借対照表に計上されない(オフバランスの状況にある)ことであり、生命保険契約のオンバランス化を如何に図るべきかという観点から、将来への方策と課題を探ろうとする。その際には、何を論じ、何を証明しようとするのかが常に意識されており、一貫した論理と明確な意図・目的をもって全体像が描かれている。

 将来の立法的解決を期待する、ある種の立法提案を含むので、筆者が提案する内容の実現可能性についてはさらに検討が必要ではあろうが、ここに示されているチャレンジングな姿勢や内容、検討・論証の手法などの種々の点からみても、十分評価に値する作品である。


論 文(PDF)・・・・・・496KB


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