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金田 陸幸 稿
「所得課税における控除の実態
   ―マイクロシミュレーションによる分析―」
(関西学院大学大学院 院生)

 本論文は、1989年、1994年および2004年の3カ年の全国消費実態調査の個別データを用いて、控除に関するマイクロシミュレーションを行っている。主な結論は、以下のとおりである。控除による課税ベース浸食の程度は大きく、2004年の収入に対する課税ベースの割合は、約35%である。収入階級別では、同じ収入階級でも税負担をしている者としていない者がいる。給与所得控除と公的年金等控除では、高所得階級ほど税負担軽減効果が高いが、配偶者控除と扶養控除については、その傾向はみられず、最も低い所得階級に対してのみ税負担軽減効果は小さい。控除が家計に与える影響については、2004年の影響が最も小さく、特に低所得階級に対する影響が大きく低下している。

 本論文は、多数の個表に基づく静的マイクロシミュレーションであり、実証性はきわめて高い。所得税制に関する政策の評価を行うには、こうした分析が欠かせない。

 ただし、本稿の分析は、静的マイクロシミュレーションに留まっており、欧米の先行研究の主流である労働供給や消費行動を含めたbehaviorモデルにはなっていない。(もっとも、我が国では、behaviorモデルはほとんど存在しない。)また、本論文では、控除を全て浸食とみなしてしまっているが、控除の中には、社会保険料負担との二重負担の調整を行うための社会保険料控除等、単純に課税ベースの浸食と整理してしまっていること(これは先行研究と同様ではあるが)には疑問がある。

 以上のように、今後の研究で改善されるべき点もいくつかあるものの、マイクロシミュレーションによる分析は重要であり、本論文の意義は大きいと考えられる。


論 文(PDF)・・・・・・1.11MB


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