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河野 益典 稿
「消費税の私的消費に対する課税についての一考察」
(大阪経済大学大学院 院生)

 本稿は、消費税における私的消費について、その範囲と課税方法について検討したものである。

 まず、1章において、私的消費の定義と課税所得の範囲について検討し、自家消費を自家消費を含んだ広い概念としての「事業者自身の消費」として捉えるとともに、課税所得の範囲について、EU、イギリス、韓国、カナダの付加価値税を概観している。

 2章では、わが国におけるフリンジ・ベネフィットと交際費及び寄附金について、個人事業者や法人の役員及び従業員が私的消費を行う場合について、所得税法、法人税法、租税特別措置法における現行規定を整理した上で、消費税の課税方法を考察している。

 3章では、私的消費に対する課税方法について、みなし譲渡課税を行う方法と、仕入税額控除を制限する方法の二つの方法について比較検討を行い、飲食を伴う交際費のように即時消費するものは仕入税額を否認する方法で、新たに消費を認識する形で課税するのであれば、みなし譲渡の範囲を拡大する方法しかないと整理している。

 以上の検討の結果として、私的消費に対して課税することを優先して、まずは、日常的に一般消費者が消費する飲食代等を中心とした交際費やフリンジ・ベネフィットの供与の中から、消費税独自で私的消費の範囲を定義した上で、消費税法上に恒久的な規定をおくことを提言している。

 本稿は、一般の消費者と同様な消費行為を行っているにも関わらず、個人事業者や法人がその役員や従業員に対して支出する私的消費が、仕入税額控除を通じて消費税負担が軽減されることによって、一般消費者との間に消費税負担の不公平感を生じさせていることを問題としている。これを解消するためには、仕入税額控除を制限することが必要であり、付加価値税を採用している大半の国においても、わが国よりも幅広い課税が行われているとした上で、具体的に上記の国を例に検討している。

 わが国における私的消費に対する消費税の課税については、平成2年度の税制改正において交際費等についての仕入税額控除に制限を設けようとしたことはあったが、審議未了で廃案になった後、その後の税制改正においては軽減税率やインボイス方式についての検討が行われるにとどまっている。

 本稿では、私的消費の具体的範囲について、フリンジ・ベネフィット、交際費、寄附金の3つを取り上げ、これらに対する所得税法、法人税法、租税特別措置法の関連する規定を検討した上で、フリンジ・ベネフィットの課税については、給与所得課税されたとしても、事業者に対する課税が行われないことを指摘し、消費税法においては、私的消費に対する消費税の課税の範囲を明確にした上で課税する必要があると説く。交際費の私的消費に対する課税については、大企業と中小企業、個人事業者の区別なく、交際費等の仕入税額控除の制限を租税特別措置法ではなく、消費税法において立法すべきであるとした上で、寄附金についても、交際費についての課税と同様に検討の余地があることを指摘している。

 本稿は、参考文献にも多くあたり、しっかりとした研究態度が伺える論文である。わが国の消費税の法的性格に対する踏み込みが浅い点が気になるが、消費税の私的消費に対する課税の問題は、今まであまり取り上げられてこなかった論点であり、消費税の増税を控えて消費税に関心が集まっている時期でもあり、消費税法が抱える問題の一つとして、私的消費という概念並びにこれに対する消費税課税の問題を投げかけた点において有意な論文であるといえる。


論 文(PDF)・・・・・・564KB


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