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佐藤 潤 稿
「会社分割税制に関する一考察
   ―会社分割税制を基軸とした構造的問題点等の検討を中心に―」
(富士大学大学院 院生)

 本論文は平成13年度税制改正により導入された組織再編税制の中で、特に会社分割税制にテーマをしぼり、その問題点とあるべき姿について考察を加えたものである。

 著者によれば、会社分割を含む組織再編税制の基本的な考え方は、再編の前後における経済的実態の実質的な変化の有無に着目して、その前後で経済的実態に変化がないものとされた場合には適格組織再編として取り扱うということになる。しかしながら、実際の税制適格要件を見ると様々な問題点が散見されるとする。即ち会社分割税制においても、(1)適格要件規定は租税回避防止のための措置等もあって、その確認が煩雑であり、簡素さが失われている。(2)「移転資産の支配継続性」の担保が欠如しており、組織再編成を行なう時点で一定の要件が見込まれていれば適用可能となること。(3)適格再編成に該当した場合に簿価移転による資産・負債が有している含み益・含み損を一定の条件さえ満たせば意図的に移転先の法人において収益・損失として実現させることも可能であること。

 (4)組織再編税制に係る租税回避行為に対する包括否認規定である法人税法132条の2の規定は納税者の税負担の予測可能性を損なう危険性を秘めた規定であり、その適用による否認が多発すれば、納税者に会社分割等を躊躇させかねない。(5)平成22年度改正で導入されたグループ法人税制は企業集団税制という点で会社分割税制と同一の枠組みに入ることとなるが、両者の「移転資産の譲渡損益」の取り扱いが一致してない。といった問題が存在していると指摘する。

 こうした問題の中で(1)、(2)、(3)について、著者としては、まず、会社分割税制の創設の趣旨があまりに抽象的で、その依拠する考え方、思想が不明確なまま、実務界からの要請と立法担当者との折衝により立法がなされたことが、複雑、難解でかつ整合性を欠いた制度を形成することとなったとして、いつかの時点での会社分割税制の趣旨等を法律上明確にすることを提言する。そして、(3)の問題は、会社分割税制の構造的な問題点であるとして、その抜本的な解決策を提言する。すなわち、分割承継法人において従来の企業活動により生じた損益と会社分割により移転を受けた資産・負債から生じる損益を現行制度のように通算し算定すべきではないとし、具体的には、適格分割により簿価で移転された資産・負債から生ずる収益・損失は、①分割承継法人が有する青色欠損金額との通算を禁止する。②分割承継法人がもともと保有していた資産・負債から生じる収益・損失との通算を禁止する。③分割承継法人の従来の営業活動から生じた収益との通算を禁止する。べきであるとしている。

 なお、(4)の問題については、法人税法132条の2の規定の濫用防止の手段として、現在の「事前照会文書回答手続き」に加えて「組織再編成に係る事前照会文書回答手続き」を導入すること、また(5)の問題についてはグループ法人税制における譲渡法人側での時価譲渡の上での課税繰り延べという取扱いを会社分割税制との整合性の確保という観点より簿価譲渡に改めることを提言している。

 本論文は、組織再編税制の中でも会社分割にテーマを絞っているが、非常に多くの文献を検討の対象としており、税法のみならず会社法をはじめとした関連法規にも言及があり、会社分割税制をめぐる問題はほぼ網羅されているものと思われる。難解なテーマではあるが、その問題点をよく把握しており、その解決策である著者の提言も具体的で明快である。論文のボリュームはかなりのものだが、内容的には無駄な部分はあまりなく、意欲的な労作と評価できよう。


論 文(PDF)・・・・・・2.2MB


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