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田中 亨 稿
「推計課税の本質論に関する一考察
   ―補充的代替手段説の検証を中心に―」
(関西学院大学大学院 院生)

 本稿は、推計課税を事実上推定説と補充的代替手段説のいずれがその本質として妥当なのかを検証することを目的としている。そこで、推計課税の必要性及びその合理性、そして実額反証可能性といった推計課税の従来から論じられてきた論点を整理・検討している。

 本稿は以下の通り、三章より構成されている。

 第一章は、「推計課税の趣旨」を申告納税制度及び青色申告制度が導入された背景を踏まえて確認している。

 第二章は、「推計課税の適法要件」について確認した。推計課税の根拠規定には明確な適法要件規定が存在しないので、推計の必要性と合理性という視点から、学説及び近年の裁判例を検証している。

 第三章は、「推計課税の本質論」の検討を行っている。まず、事実上推定説及び補充的代替手段説を、学説および裁判例から定義を確認したが、事実上推定説と補充的代替手段説とでは推計の合理性の内容が異なることが確認された。

 推計課税は、推計の必要性が充足される限り推計の合理性は一応の合理性で足り、実額反証は可能であることを確認することにより事実上推定説よりも、補充的代替手段説が推計課税の本質として合理的であることを結論として導出している。

 なお、筆者は「本論文の目的は推計課税の本質論を明らかにすることであった。その結果、補充的代替手段説が妥当であるとの結論に至った。補充的代替手段説は課税庁側に有利な説であり、最近の裁判例においては補充的代替手段説を採用する裁判例が増加している。また、実額反証においても、絶対的三位一体説に立ち、合理的な疑いを容れない程度の立証が求められ、納税者の実額反証が認められることはほとんどないといってよい。

 このような推計課税を避けるためには、納税者が正確な会計帳簿の記帳・保存を行うしかない。戦後に申告納税制度が採用され、そこから半世紀以上、青色申告と白色申告が併存している制度であった。国税通則法の改正による所得税法の改正で平成26年1月からすべての白色申告者に帳簿の保存義務が課せられるようになった。」ことを本稿の「おわりに」で述べている。

 申告納税制度の制度趣旨を踏まえれば納税者自らが記帳義務を履行し、事実上、推計課税が行われる余地を排除できるよう努力すべきであるとする筆者の指摘には賛同できる。

 本稿では判例を詳細に検証し、推計課税の本質について判示している裁判例を丹念に検証し、説ごとに分類整理し数値化している。裁判例の数値化という実証的手法を用いて問題意識の解明に挑戦している点は、新鮮であり、その研究に対する姿勢は高く評価できる。

 しかし、一方で、推計課税の本質ではなく、なぜ「本質論」という「論」をあえて用いているのか、気になる点として指摘しておく。


論 文(PDF)・・・・・・1.07MB


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