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藤井 麻央 稿
「独立企業間価格算定における「幅」に関する一考察」
(立命館大学大学院 院生)

 日本の移転価格税制(租税特別措置法66条の4)は特殊関係のある外国法人(国外関連者)との取引を通じた所得の海外移転を規制するために「適正な対価」ないし「独立企業間価格」という概念を中心として構築された税制である。その独立企業間価格は、独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法、その他合理的な方法によって算定された金額とされていたが、OECDは最適方法ルールの導入をはじめとした大幅なガイドラインの改訂を行い、日本においても平成23年に最適方法ルールが導入されることとなった。また、当該改訂により利益法と関係性の強い幅の概念が導入され、租税特別措置法関連通達、移転価格事務運営要領において幅の規定がなされた。本論文は、そのような制度改正を背景として、取引法における幅と利益法における幅の関連性、特に利益法における利益水準指標と独立企業間価格に着目し、今後の取引単位営業利益法に関する利益水準指標および幅について提言することを目的としている。

 本論文は、そのような観点から、第1章において日本の移転価格税制における独立企業間価格の概念を確認し、これまでの幅の概念についての考え方を整理し、平成23年度税制改正で新たに導入された幅の規定、幅との関連性がある利益水準指標の規定に関する問題点が明らかにされ、第2章において幅の概念を最初に導入した米国における幅の概念、幅との関連性が強い利益比準法に言及することで利益水準指標について検討している。さらに、第3章では日本の移転価格税制の執行に際して実務上大きな影響を及ぼしているOECD移転価格ガイドラインの幅と取引単位営業利益法における利益水準指標について検討を行っている。最後に、第4章において利益水準指標からなる幅の概念について言及し、新たな利益水準指標の規定、状況に応じた幅の規定について提言を行っている。

 独立企業間価格算定における幅の概念については、従来幅の種類と調整ポイントに関する議論にとどまっており、本論文はそれを超えた研究を行っていることは極めて独創性の高い研究であると評価できる。また、論文の構成や議論を裏付ける実証性も相当程度の水準になるものと評価できるすぐれた研究である。結論として、利益水準指標の選択肢を増やし、検証対象の性格や比較対象に関するデータの信頼性等のすべての事実と状況を反映した利益水準指標を選択できるような規定が必要であると述べている。


論 文(PDF)・・・・・・1.05MB


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