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吉田 多恵子 稿
「所得税法における納税義務者―住所判定を中心として―」

(関西大学大学院 院生)

 経済活動のグローバル化・金融の自由化さらにはITの発展によりビジネスモデルやビジネススタイルが変化し、これを受けて法人のみならず個人の活動もグローバル化してきていることから、日本においても適正な課税や徴収の確保を図る観点から納税義務者の範囲の見直しや国外財産調書制度の創設など施策が講じられてきている。

 本論文は、そのような経済環境および制度の変化を背景としながら、所得税法における納税義務者の適格要件の最重要判定要素である住所の解釈を通し所得税法における納税義務の有無および課税範囲について検討することを目的としたものである。

 本論文は次の4章で構成されている。第1章は住所を主な判定基準とする所得税法、相続税法の納税義務者の規定を概観したもので、第2章において納税義務者と同様に納税義務を有する源泉徴収義務者に着目し源泉徴収制度においても住所が課税範囲、税率、課税方法、控除等に差異をもたらすものであるという見解を提示している。さらに、第3章においては租税法における住所は民法からの借用概念であるとの立場から民法における住所に関する規定を概観し、住民基本台帳法、公職選挙法、国籍法、旧農地法における住所に関する問題を判例等で確認しそれらの法律が住所に関する定義規定を持つものではなく立法趣旨等を考慮して解釈している点が明らかにされている。最後に、第4章では客観的な住所の有無で納税義務の有無を決定することが合理的であるが、居住中に発生した国内源泉所得とならない資産のキャピタル・ゲイン等一定のものについては当然に課税根拠を持つものであるから出国税等を参考に検討の余地があると述べている。

 以上、本論文は、個人のグローバルな移動が容易となった現在の社会環境においては国籍が必ずしも国とのネクサスを示すものであるとは限らないが、そこに住所を有することで国家から公共サービスや社会的基盤の整備等の経済的便益を享受している点を斟酌すれば納税義務発生のメルクマールには住所が最も法的安定性を備えた判定基準となると結論づけている。本論文は提題に対して十分な先行研究のレビューを行っているという点で論理性・実証性・独創性にすぐれており、それに基づいた真摯な議論の展開がなされていることは高く評価することができるものである。


論 文(PDF)・・・・・・656KB


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