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川崎一泰 著
「官民連携の地域再生―民間投資が地域を復活させる―」
(東洋大学経済学部教授)
(株)勁草書房 平成25年5月

 本書は人口や住宅・インフラの高齢化と財政悪化が進む我が国における地域経済の再生の在り方について(1)データによるエビデンスと(2)実証分析(計量的統計分析の手法)に基づいて論じている力作である。第1部「地域政策の経緯と将来における制約」、第2部「人口制約下の地域政策」及び第3部「財政制約下の地域政策」から構成される。第1部では「均衡ある国土の発展」を志向した従来の地域政策を批判的に概観した上で、「地域生産関数」の推計手法から公共投資・民間投資の生産性を試算している。この試算結果に基づき、人口=労働力や民間投資が生産性を均衡化させるように地域間での配分が進んできた否かを検証する。労働=人口については均衡化が進んでいないこと、その要因としては財政余剰が人口配分を歪めてきたことが挙げられる。国の補助金等で地方圏での公共サービス水準が引き上げられた結果、本来人口流出が進むべきエリアに人口が留まっていることが挙げられる。

 続いて第2部では人口減少が進む中での各地域内における労働力配分について分析をする。官民の給与格差、特に地方圏において公務員の給与が民間給与を上回っていることが、優秀な人材の公共部門への流出を招いていること、そのことが民間経済の活力を阻害していることを実証的に示している。また、人口減少が住宅市場に及ぼす影響を都道府県別に検証している。第3部では国・地方の財政悪化が進む中、地方の歳出の合理化に着目する。歳出を合理化する方法としては(1)市町村合併を進めるなどして規模の経済の活用を図ることや(2)人口の集約化によって公共サービス提供を効率化することが挙げられる。本書では地域ごとに一人あたり歳出を最小化するという意味で効率的な人口密度=都市のコンパクト化を試算している。我が国の固定資産税は市町村の基幹税であるが、課税標準額=課税ベースが市場価格からかい離するなど@財源確保の面、及び(2)土地の活用促進の面で十分な機能を果たしてこなかった。筆者は更に開発利益が土地価格(市場価格ベース)に反映されることを利用したTIFを取り上げる。課税ベースの適正化を図ることで、(3)将来の固定税収を担保にした再開発費用の調達が可能になる。

 本書は経済学の分析=実証分析に従って、エビデンスとロジック=論理に基づいた地域政策の課題と改革の方向を示す良書といえる。制度的な議論に留まらすデータによって検証している。我が国は「均衡ある国土の発展」からの転換が余儀なくされている。そのためには人口=労働色の地域間配分の効率化、各地域内における労働力の部門間(公共と民間)の効率化に加えて人口の集中化=コンパクト化が求められている。本書はこうした提言の妥当性を実証的に説得力のある形で裏付けている。特に国・地方の財政制約が増す中、限られた財源の有効活用、活性化に繋がる再開発の促進に固定資産税の果たす役割が大きいという主張は示唆に富み、興味深い。


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