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上村大輔 稿
「寄附金税制に関する一考察―
 「寄附金控除の年末調整制度化」を中心として―」
(千葉商科大学大学院院生)

 本稿は、我が国が欧米諸国に比して寄附文化が低いと言われていることに着目し、公的な寄附の促進を図るため、個人の寄附金の課税制度(所得税)において、源泉徴収と年末調整の導入を提言するものである。

 そのため、本稿では、まず、我が国における個人の寄附の実態を調査し、我が国の寄附金税制について所得税、法人税、相続税及び地方税の現状を調査し、我が国の所得税法における源泉徴収制度と同制度における年末調整の現状と問題点を検討し、次いで、比較法学的に、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス及び韓国における寄附金税制と源泉徴収制度を調査している。

 このような制度分析をした上で、我が国の企業によっては、従業員の寄附を容易にするために、「給与天引き寄附」を実施していることに着目しその実態調査を行い、その制度を一層拡充するために、税制上の手続の簡素化が求められていることを把握している。

 以上の検討を踏まえ、公的寄附の一層の推進を図るため、(1)企業内給与天引き寄附については、年末調整において寄附金控除を認めること、(2)所得控除の適用下限額(2000円)を撤廃すること、(3)企業内天引き寄附を推進するため、当該社内基金について寄附金控除対象団体の法人格を認めること、(4)寄附金団体のインターネット上の検索システムを構築し、寄附金領収書の書式統一化を進めるなど環境整備を図ること等を提言している。

 以上のように、本稿は、我が国が寄附文化のレベルが低いと言われている中、そのレベル引き上げる施策として、所得税制における給与の天引き制度(所得税、住民税等)を利用し、かつ、所得税の年末調整における寄附金控除を提言するものであるが、それらは、それぞれの実態を把握し、寄附をしやすくする方法として評価できる。特に、各企業において、「給与天引き寄附」が行われていることに着目し、その実態調査を行って、当該寄附が年末調整によって所得税法上の恩典を受け易くする必要性を指摘していることには、その実証性と独創性については高く評価することができる。もっとも、論理性については、論理の展開等について、やや平板であり、物足りないところもある。また、提言している「給与天引き寄附」についても、寄附先の選定等種々の障害が懸念されるので、著者の提言の実現性については、なお検討の余地があるものと考えている。

 以上のように、論文全体としては、やや難点もあるが、その提言の独創性に鑑み、受賞論文として評価できる。


論 文(PDF)・・・・・・1.18MB


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