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川端一真 稿
「複数の組織再編等の組み合わせによる租税回避とその否認
 ―取引の一体的把握の是非をめぐって―」
(福岡大学大学院院生)

 租税回避を目的として複数の組織再編等の組み合わせる納税者の行為は想定できるが、複数の組織再編等が、個々の単体としては実定法上の適格要件を形式的に満たしている(または満たしていない)にもかかわらず、課税庁が、そうした個々の適格要件以外の基準として、複数の組織再編等の組み合わせを、実質的に一体のものに引きなおして、当該組織再編の否認できることを無条件に許容することは納税者の予測可能性や法的安定性は大きく損なわれ、租税法律主義に反することになるのではないだろうか。この点に筆者の問題意識は集約される。本稿は、複数の組織再編等を組み合わせによる租税回避に対する否認問題を不当な租税回避の防止と、課税関係に関する納税者の予測可能性の確保との調整の問題を本稿の目的としている。

 論文の構成は、第1章で、問題の所在を提示する。次に第2章で、わが国において、複数の組織再編等の一体的把握による否認が、組織再編成に係る行為・計算否認規定(いわゆる包括的否認規定)である法人税法132条の2の適用可能性を検討している。第3章で、複数の組織再編等を濫用した不当な租税回避に対する、包括的否認規定によらない別の対抗方法を探るため、米国税制における否認ルール形成のあり方を検討している。また第4章では、わが国の組織再編実務の第一線で活躍する税務専門家に対して実施したヒアリング調査の結果を整理し、第5章で提言を行っている。

 テーマはタイムリーであり、組織再編を利用した租税回避の否認という租税公平主義の要請と、予測可能性の確保と租税法律主義の要請の相克と調整の問題を主題にしており筆者の問題意識について、本論文において一定の結論を導出し得ていることは評価できる。

 また、米国の複数の組織再編等の組み合わせ濫用した租税回避に対する対抗策は、個別否認規定をまず整備し、個別否認規定の間隙を狙った租税回避に対して判例法理(段階取引の法理等)によっていることを紹介し、組織再編を利用した租税回避に対する我が国の対応の方向性について提言を行っている。

 比較法研究の手法を取り入れているのであるから米国の文献を一次資料として参照することが課題とされることも付言しておきたい。

 しかし、課題はあるものの租税法律主義の視点を踏まえた租税回避の否認の問題の検討の方向性については賛同できるものであり、主要文献を渉猟した同研究は高く評価できる。


論 文(PDF)・・・・・・2.62MB


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