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小池正幸 稿
「企業集団税制における損失控除問題に関する一考察
  ―適格現物分配を題材として―」
(立命館大学大学院 院生)

 本稿は、企業のグループ経営に対応する税制とされる組織再編税制、連結納税制度、グループ法人税制の三つの税制を包括的に企業集団税制と定義したうえで、平成22年度の税制改正では、我が国の法人税法において、グループ法人税制と同時に適格現物分配の制度が導入されたが、同制度は、完全支配関係にある親会社に対する現物分配について、子会社の帳簿価額で現物資産を移転させることを可能にするもので、法人税法上では組織再編税制の一つとして位置づけられている。

 筆者の問題意識は、組織再編税制とグループ法人税制(および連結納税制度)は異なる制度であり、適格現物分配制度は結果として両者に対して二律背反的な不整合を生じさせている、ゆえに具体的には次の3点で問題を生じさせているという点にある。

  1. 格現物分配が帳簿価格で移転するという仕組みを利用した所得振替と、それによる損失控除の問題
  2. 企業集団税制における支配関係の差異から生ずる損失控除の問題
  3. 決算時における二重の損失控除の問題

 本稿では、この企業集団税制と適格現物分配との間の不整合から生ずる三種の損失控除の問題の問題点を検証したうえで、それを解決するために米国の制度にその示唆を求め、そのうえで問題解消のために、検討の結論として、適格現物分配の廃止、子会社清算に特化した規定の導入、清算以外の損失控除への対応を基本的な方向性として採用し、企業集団税制における損失控除防止規定の導入を提案している。

 具体的には、所得振替とそれによる損失控除の問題については、適格現物分配という枠組みを撤廃し、特定の支配関係にある法人間の現物分配に関する課税関係について、米国と同様に連結納税制度やグループ税制における課税繰延べの方法と整合的にすべきである事を指摘するとともに、清算時における二重の損失控除の問題については、組織再編税制とは別のスキームで、米国の手法と同様に子会社清算に限定した制度設計を提案している等、興味深い。

 具体的な制度設計の提案は、租税法の基本原則と関係付けてなされるべきであり、米国の制度を参考にするのであれば、米国の文献を一次資料として渉猟すべきであるが、それがなされていないことも今後の課題とされる。

 また、企業集団税制の構築に向けて蓄積された我が国の議論の歴史的検証を試みることなしに、結果として生じた問題点を他国の制度を参考に提案することの危険性を指摘しておかなければならない。

 以上のような課題を指摘できるが、筆者の問題意識は明確であり、我が国の企業集団税制の問題点を解消するための提案は詳細かつ具体的であり、租税資料館賞に値する研究成果として高く評価できる。


論 文(PDF)・・・・・・1.03MB


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