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武井知佐 稿
「国際的租税回避に対抗する法人税制についての一考察
 ―BEPS対抗策と包括的租税回避否認規定の導入を中心に―」
(名古屋経済大学大学院 院生)

 本論文は、経済の自由化・グローバル化や情報化社会の進展に伴って、国際的租税回避スキームを利用した租税回避が多く見られるようになったことを背景として、その租税回避防止策について検討した研究である。

 本論文は、4章で構成されている。第1章では、国際的租税回避の歴史を概観した上で、税源侵食の実態につき米国議会、英国議会およびOECDのレポートに基づき、代表的な租税回避スキームであるグーグルのダブル・アイリッシュ&ダッチ・サンドイッチスキーム、シンガポール子会社の利用による租税回避を検討している。第2章では、国際的租税回避の実態を踏まえ、日本の現行税制の問題点につき、租税回避の射程、居住地国概念、外国子会社合算税制を中心に検討を行っている。第3章では、国際的租税回避に対する国際的な取り組みとして、EUおよびOECDの議論を検討している。最後に、第4章においては、国際的な協力により租税回避に対抗しようとする潮流の中、日本の法人税法においても新たなる租税回避防止規定、租税回避否認規定の制定に向けた検討を行うことはできないかという観点から、包括的租税回避否認規定導入の可能性を中心として、外国子会社合算制度について再検討を行い、居住地国概念の相違を利用した租税回避に対する租税条約の見直しにつき議論を展開している。

 本論文は、現行の国際的租税回避は各国の居住地国概念の相違、納税義務者の定義および範囲規定、タックス・ヘイブン税制、ロイヤルティの取扱い、移転価格税制およびその差異を巧みに利用したものであり、現行の国際税制で対抗することは難しい点、また日本においてもシンガポールをはじめとする軽課税国を利用した国際的租税回避が行われている実態を明らかにし、かかる事実関係に基づいて包括的租税回避否認規定導入の可能性を中心として、外国子会社合算制度の再検討、居住地国概念の相違を利用した租税回避に対する租税条約の見直しにつき検討を行っている点で高く評価される研究である。多国籍企業を中心とした国際的租税回避による税源侵食の実態は看過できないレベルに達しており、日本においても今後包括的租税回避否認規定導入を初めとする抜本的な租税回避防止策を打ち出す必要があることが理解できる。論文作成に当たっては、海外の文献も丹念に渉猟しており、実証性と独創性という観点からも十分な検討がなされている研究であると判断した。


論 文(PDF)・・・・・・1.21MB


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