公益財団法人租税資料館


トップページ>>租税資料館賞>>第23回入賞作品>>「わが国の居住者等による二重非課税についての租税条約の濫用の防止」
戻る 次へ

谷口友一 稿
「わが国の居住者等による二重非課税についての租税条約の濫用の防止
   ―租税条約等実施特例法の観点からの防止策の検討―」
(名古屋経済大学大学院院生)

 本論文は、我が国の居住者等による、租税条約の濫用による二重非課税の作出を防止する方策を、租税条約実施特例法の観点から検討したものである。まず問題意識として、国際的二重非課税が生ずるのは、領土主義課税原則を採用する国があることから、自国の居住者による租税条約締約相手国の居住者に成りすまそうとする行為が誘発されるのではないかとの仮説が述べられ、これを実証するために、ある想定事案について、どのような国と国との間で二重非課税が生ずるかを分析している。その結果、法人に対してのみ、領土主義課税を採用している国との取引について二重非課税となることが顕著であることを明らかにしている。この分析に際しては、租税条約の濫用、トリーティ・ショッピングに該当するかどうかも考察している。そして、結論として、租税条約の濫用やトリーティ・ショッピングを防止するためには、LOB条項(特典制限条項)及び租税条約等実施特例法の手続規定を整備する必要があるとし、具体策としては、立証責任が課税庁側にあると解されている我が国においては、租税条約締約国に子会社を設立したような場合に、その子会社が実際に事業を行っているかどうかを立証する責任を納税者側に課する規定を置く必要があると同時に、我が国が締結する租税条約においても、LOB条項を積極的に取り入れる必要があると説いている。

 トリーティ・ショッピングによる租税条約の濫用をどのように防止するかについては、多くの研究業績がある。本論文もその一つであって、テーマ自体には新味があるわけではないが、我が国の居住者等が外国子会社を設立して条約特典を濫用したと判定する基準を探るために、一定の想定事例を作出し、考察を試みている点において本論文の特色がある。多くの原典に当たり、特に日米租税条約及び内国歳入法典の規定を詳しく分析しながら、関連条項の解釈論を具体的に検討し、可能な解決策を提案している点において本論文は優れている。もっとも、立証責任の転換の問題は、関係条項の改正によって容易に実現することができるはずであるにもかかわらず、具体的な提案がなされていない点は残念であり、またトリーティ・ショッピングによる租税条約の濫用が立証責任の転換だけで解決できるものかも疑問であるので、今後さらなる研究が望まれる。


論 文(PDF)・・・・・・1.18MB


戻る 次へ




Copyright (c) SOZEISHIRYOKAN. All Rights Reserved.