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平 慎之佑 稿
「ハイブリッド・エンティティに係る課税問題についての考察」
(立命館大学大学院院生)

 本論文は、ハイブリッド・エンティティに係る租税条約の適用の齟齬について、日本が締結する租税条約における望ましい調整規定のあり方を検討することを目的とした研究である。事業者が事業を行う場合、どの形態を利用するかは事業者の選択に任されており、典型的には、法人形態や組合形態がその選択肢として考えられる。法人形態で事業を行う場合は団体課税が適用されるのに対して、組合形態で事業を行う場合にはパス・スルー課税が適用される。ハイブリッド・エンティティとは、一方の国で団体課税され、他方の国でパス・スルー課税される事業体のことを一般に意味している。

 本論文は、4章構成となっており、第1章の事業体の課税とハイブリッド・エンティティの問題点では、日本の現行の事業体課税を概観し、ハイブリッド・エンティティから生じる問題点を明らかにしている。第2章の国際的な人的帰属と条約適用上の問題−OECDの議論を中心に−においては、OECDの議論を中心に、人的帰属の抵触と租税条約の適用上の問題を検討している。OECDは、原則として、ハイブリッド・エンティティに対する条約の適用を考えるにあたり、源泉地国は自国内で生じた所得について租税条約の特典を請求する者の居住地国での扱いを考慮すべきとしている。第3章のハイブリッド・エンティティに係る租税条約上の調整規定では、アメリカと日本の調整規定を比較し、日本の調整規定の課題を指摘している。第4章のハイブリッド・エンティティに対する望ましい課税のあり方では、以上の3つの章の議論を踏まえて、日本が締結する租税条約におけるハイブリッド・エンティティに関する調整規定の望ましいあり方を検討している。

 本論文は、結論として、次のように提言している。まず、基本的な考え方として、OECDが提案するように、源泉地国が租税条約上の居住者として条約の特典の適用を要求する納税義務者の居住地国の取り扱いに合わせるものとする。そして、二国間のケースでは、リバース・ハイブリッド・エンティティから構成員への直接に支払については、条約適格がないことを明確化すべきであることを提案している。また、三ヶ国間の場合については、構成員に対して条約適格を認める要件として、条約の二重特典を防ぐため、事業体の所在地国においても事業体をパス・スルー課税すると言う点を加えることを主張している。さらに、その要件を満たしているかどうかを明確にするため、事業体の所在地国と源泉地国の間で、租税に係る情報交換規定を有する条約を締結している場合に限るという点を要件に加えることを述べている。以上、本論文は、内外の先行研究や関連する文献を幅広くかつ綿密に解読し、極めて論理的に提題を解明しようとした力作であると高く評価した。


論 文(PDF)・・・・・・908KB


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