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船橋 充 稿
「所得税制の課税単位に関する一考察」
(関西大学大学院院生)

 個人単位課税を基礎とするわが国の所得税制を世帯単位課税に変更した場合にどのような税負担の変化が生じるかをシミュレーションでもって考察し、所得税を世帯単位課税に変更する場合の必要な条件について検討をする。

 本論文の全体は3章からなる。第1章では、所得税の目的と効果、所得概念、所得税負担率、わが国の所得税の概要など、所得課税の基本となる基礎的概念を筆者独自の見地から分析し説明する。これらの議論は、第2章以下の二分二乗課税方式のシミュレーション設定で用いられている条件を導き出すための布石になっている。第2章では課税単位のあり方を考察の対象とし、個人単位課税と世帯単位課税を比較すると共に、政府税調における課税単位検討の状況を紹介する。筆者の基本的立場には、「個人単位課税では個人間の公平は満たされるが、世帯間の公平は満たされない」という思いがあり、この章では世帯間の公平を満たすためには、世帯単位課税を採用する必要があるとの立場が強調されている。論文の中心的部分をなす第3章では、(給与所得者を念頭に置きながら)わが国の課税単位を個人単位から世帯単位に移行した場合に、どのような課税効果の変化が生じるかを、片稼ぎと共稼ぎなど、種々の条件設定の下でのシミュレーションをして考察・検討する。結論として筆者は、二分二乗方式で「公平な」世帯単位課税を行うためには、(1)所得税の納税義務者である「居住者」を「個人」から「単身者又は夫婦」に変更し、(2)夫婦の場合には所得税額の計算の順序や基礎控除等の計算の仕方を変え、(3)配偶者控除と配偶者特別控除を廃止すること、および、(4)夫婦については適用税率を変更することを、それぞれ提案する。

 公平な税制の構築を目指して、課税単位の見直しの必要性を数値でもって跡づけようとする意欲的で独創的な作品である。所得税の課税単位をめぐる議論は、昨今の税制改革において焦点とされおり、まさにタイムリーな課題に取り組んでいる。具体的な作業において筆者は、片稼ぎ世帯や配偶者がパートで働く場合なども念頭に置きながら、世帯所得の分割状況をいくつかのパターンに分けて、税負担の変化を詳細に分析し、具体的な提言につなげる。給与所得控除や社会保険料控除など、直接的あるいは間接的に、所得と連動する所得控除の影響についても考察をすると共に、税収中立となるように税率構造に変化を加えて税負担状況の変化をチェックするなど、分析の仕方における精緻さや分析の幅の広さなどの点でも、十分に評価に値する。フラット化や累進性の強化など税率構造に変化を加える試みをしたり、扶養控除などの種々の控除制度を研究条件・考察対象に加えたりするなど、新たなシナリオの下で今後も研究を進めていくならば、将来的には包括的な税制改革への示唆や提言も十分に期待しうる作品となっている。


論 文(PDF)・・・・・・1.02MB


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