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鈴木 将覚 著
『グローバル経済下の法人税改革』

(みずほ総合研究所政策調査部主任研究員)
平成26年5月 (株)京都大学学術出版会

 本書は、経済のグローバル化が進む中、法人税のあり方を経済分析を通じて総合的に論じるものであり、第1章から第7章までによって構成される。第1章では、閉鎖経済と開放経済とに区分し、それぞれにおける法人税のあり方を論じるが、課税客体を正常利潤と超過利潤とに区分することに特徴がある。

 第2章では、国際課税の論点として、伝統的な居住地主義と源泉地主義を論じ、二重課税排除のための外国税額控除方式と国外所得免除方式について、それぞれのあり方を論じる。

 第3章では、国際的な租税競争の考え方について、当該租税競争を各国の資本誘致のための資本税率の引き下げ競争として捉え、大国と小国との差異について論じる。

 第4章では、法人実効税率について、国際比較を行うとともに、課税ベース面について、主として、機械設備の償却方法、負債利子控除のあり方から論じる。

 第5章では、アジアの租税競争について、小国と大国との差異、各国の実効税率の差異等の観点から論じる。

 第6章では、抜本的な法人税改革案について、現行の法人税は、投資に悪影響を及ぼすこと、負債調達を優遇していること、非法人形態を優遇すること等の問題点があるから、中立的な法人税改革案として、キャッシュフロー法人税又は二元的所得税を軸にした税制改革を提言する。

 第7章では、ロックイン効果が生じないキャピタルゲイン課税として、現行の実現ベースのキャピタルゲイン税では、同税の実現の先延ばし(ロックイン)効果が生じるので、資産保有期間に中立的な発生ベースのキャピタルゲイン税の必要性を提言している。

 以上のように、本書は、法人税制について、主として、経済学的(経済分析)な見地から、国際的な学説等を踏まえて、その改革論を論じるものである。その論述においては、諸外国の制度、それに関わる最近の学説等を踏まえており、一つの「法人税制度論」として評価できるものである。その点では、本書は、受賞論文として評価できる。

 しかし、本書の改革論は、現実的、実務的見地からみると、大部分は実現困難なものであり、それらの見地から生じる反対論についても然したる反証も試みているとも考えられない。

 例えば、課税所得を正常利潤と超過利潤に区分することについては、その算定実務において非現実的である。また、キャッシュフロー法人税も観念論の域を出ないし、二元的所得税も我が国になじむものではないことが論証されている。さらに、発生ベースによるキャピタルゲイン税は、そもそも発生の測定(資産負債の完全な時価評価)事体が極めて困難であるが、納税資金の確保の見地からも賛同も得られないであろう。

 よって、本書については、これらの諸問題について、反対論者から賛同が得られるような更なる研究が望まれるところである。


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