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関野 満夫 著
『現代ドイツ税制改革論』

(中央大学経済学部教授)
平成26年7月 (株)税務経理協会

 本書は、ドイツにおいて、1990年代から2000年代にかけて実施された所得税改革、法人税改革、売上税改革、環境税改革のそれぞれを取り上げ、その具体的内容、効果、改革をめぐる議論の状況を整理したものである。この整理は、@所得再配分による公平、A新自由主義的な「中立」「簡素」の影響、Bドイツ税制の歴史的経緯の視点から行われ、結果としては、@「税制改革2000」プログラムにより、所得再分配効果は相対的に縮小し、富裕所得層の租税負担を軽減することによる投資・経済活動の促進が進められたこと、A所得税のフラットタックス構想が2005年前後に強力に提唱され、実現しはしなかったものの、売上税や企業課税の改革に相当な影響力を発揮したこと、B売上税改革に当たっては、課税の中立性を重視し、軽減税率の廃止と低所得者対策へのながれが始まったこと、C2008年企業税制改革により、経済グローバル化に対応した企業経営の促進と税収確保の両立が目指されたこと、D州税としての営業税改革が進められたこと、E富裕層に対する課税としては、所得税減税と両建てで、富裕税の再導入が議論されたこと、F環境税改革により、環境改善と税収増との両面を狙った改革が進められていることが、明らかにされている。これらの7つの改革は、いずれも斬新なもので、とりわけ2008年企業税制改革は、ドイツ企業の国際競争力を高め、ドイツの投資立地の改善に大きく寄与したといわれている。これらの改革は、当時の保守系政権政党のカラーを色濃く投影するものであるが、大胆かつ革新的な提案は、日本にとっても非常に参考になるものといってよい。

 評価としては、ドイツの主要税目について一貫した視点で税制改革の内容が分析されており、その結果として実現した現在のドイツ税制に対する正確な評価が行われている点で、大変優れた業績であるといえる。ただし、実証性についていえば、柱となった時期における税制改革をめぐるドイツ国内外の議論がもう少し幅広く調べられているとより説得力が増したのではないか、とりわけ、EUの租税政策との調和がどのようにドイツ税制に影響したのかを加えるとよかったと思われる。


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