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橋 里枝 稿
「一般的租税回避否認規定の対象領域と実効性
 ―英連邦諸国の経験からの一考察―」

(税理士/慶應義塾大学大学院 院生)

 我が国では租税回避に対して従来、個別的に否認規定を適用してきた。納税者からみれば課税に係る法的安定性や予見可能性が担保されていないという懸念や税務当局からは新たな租税回避に対応できないリスクが伴う。筆者は英国のGAAR(一般的濫用否認規定)を中心にカナダ、オーストラリアの事例を概観、その課題を改善しつつ、我が国における「一般的租税回避否認規定」の導入を提言する。

 本論は次の4章から構成される。第1章は租税回避否認の意義と同規定の分析を既存文献・解釈を概観している。一般的否認規定を定めるには租税回避が明確に定義されなければならない。課税は経済活動に影響する。課税による価格上昇は当該財への需要を減じるだろう。しかし、こうした需要減少は租税回避には当たらない。当然=合理的な経済判断に基づく判断だからだ。租税回避とはその行為自体に経済合理性=収益性はなく、税の減免のみが発揮される(合理的目的と経済的実質の欠如)効果とされる。合わせて一般的否認規定と個別否認規定のメリット・デメリットが比較される。(租税回避の定義に関わるが)法的安定性や予測可能性に着目している点が興味深い。続く第2章、第3章ではオーストラリア、カナダ、英国における一般的否認規定を紹介する。立法上の趣旨=趣旨に反した行為になっているかどうかや経済的帰結=結果的に課税の減少に繋がっているかどうかを租税回避の判断基準とする(ダブル合理性テスト)、事前紹介制度や第三者機関の設置など一般的租税回避否認規定に必要な事項について詳述する。第4章では我が国における一般的租税回避否認規定の導入に向けた提言を行う。租税回避の定義から立証責任の所在、課税要件まで詳細に渡って検討している。我が国における一般的否認規定に係る判例として航空機リース事件を取り上げている。

 ただし、一般的否認規定も予見可能性や行政による裁量拡大といった課題がある。筆者は英国等の経験からこうした問題を解決するための改善策を提示する。具体的には第三者委員会が承認した法令解釈集の導入、立証責任を行政側に課すこと、立法趣旨との合致や法的欠陥の利用の有無を判断の要件とすることなど7項目を挙げている。我が国ではBEPSを含めて対症療法的に租税回避に対して対策を講じてきた。こうしたアプローチに限界があるとすれば、筆者の提言する「一般的租税回避否認規定」は有効な選択肢となり得るだろう。論文の記述、論理構成は総じて丁寧であり、同規定の導入に向けた良質なガイドラインとなっていることは高く評価したい。


論 文(PDF)・・・・・・0.97MB


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