公益財団法人租税資料館


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蛯澤 美江子 稿
「公益法人税制に関する一考察
 ―イコールフッティングの視点からの検証―」

(國學院大學大学院 院生)

 本論文は、平成20年改正で導入された新たな公益法人課税制度の中で、従来の収益事業課税の原則が一部修正された点(公益社団・財団法人については外形的に収益事業に該当してもそれが公益目的事業に当たれば非課税とされる)を捉え、課税理念の変更があったとして新制度の立法趣旨を検証し、最終的にはその立法趣旨を妥当なものと判断する論文である。

 論理構成は以上のとおりであるが、これを検証する過程は公益法人税制の骨格全体に及ぶ包括的なものとなっており、税制全体の沿革の確認、比較法、判例研究、提言と続く検討過程では基礎理論に費やす部分も多く、やや冗長な印象は否めない。しかし、各パーツについて丹念な個々の検証は多くの先行研究の消化のためには必要とも考えられ、修士論文の質を損なうとまでは判断されないと認められる。

 内容を個別にみていくと、まず第1章で公益法人に対する民事法制及び会計制度の枠組みを解説し、それを受けて第2章が、現行の公益法人税制を解説している。なお、国内法制のリサーチがシャウプ勧告等から法人擬制説・実在説を含む伝統的な議論に割かれたページは本論から離れた叙述でやや冗長であり、また比較法が2次資料で簡単に紹介されているのみで副題との関連が十分リサーチされていない点など若干の課題が散見される。しかし、一方で、公益法人に関する各種のデータを駆使して課税対象としての公益法人の実態をわかりやすく解説している点は評価できる。

 第3章で取り上げた判例は、すでに評釈が広く公開されているものを含めて関連するものが網羅されており、かつ個々に丹念な分析が行われておりリサーチ力が発揮されている。第4章と第5章は、これまでの検証を踏まえたまとめの部分と立法提案の部分である。大筋は現行のイコールフッティングを目指した収益事業列挙方式(プラスみなし寄付金制度と軽減税率適用による緩和)の限界を公益認定法人の課税制度改革との関係で指摘するものであり、抜本的な解決は、2005年税制調査会ワーキンググループの報告に掲げられた「対価を得て行う事業方式」の採用を支持している。

 以上の通り、テーマとの関係では関連性の薄い叙述が含まれている点や実質主義に基づくイコールフッティング論の実施可能性の検証不足など改善の余地も認められるが、テーマを大局的に捉え膨大な先行研究や資料を駆使した力作であると認められ、奨励賞にふさわしい論文と判断される。


論 文(PDF)・・・・・・1.55MB


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