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田々邉 献 稿
「貸倒損失と部分貸倒」

(名古屋商科大学大学院 院生)

 本論文は,法人税法における貸倒損失と部分貸倒に関する研究である。本研究の背景には,昭和44年の基本通達改正における貸倒損失の認定基準に関連して,平成21年以降に法人税法の規定が改正されたことにある。平成21年には法人税法33条が改正され金銭債権の評価減禁止規定が廃止され,平成23年には法人税法52条の改正があり貸倒引当金が原則的に廃止された。本論文は,かかる法人税法改正を踏まえて,貸倒損失に関する旧来の解釈理論を見直し,新たな解釈理論の構築を検討しようと試みたものである。第1章の問題提起では,法人税法における貸倒損失について概観し貸倒損失の認定基準の問題点を検討している。第2章の「全額回収不能基準」の検証では,基本通達9-6-2の全額回収不能基準を支持する学説として,債権の総資産担保説,債権評価の技術的困難説,債権の評価減禁止説について再考し,前者の2節には理論的妥当性が現在では失われていることを明らかにし、最後の評価減禁止説については現行制度に矛盾があることを指摘している。第3章の部分貸倒では,全額回収不能基準の代替基準としての部分貸倒基準の合理性を税法学,会計学,社会政策の観点から検討している。第4章の判例研究では,興銀事件における「社会通念」基準と名古屋地裁判決(昭和38年7月16日判決)による部分貸倒の認定要件について考察している。最後の第5章の外国の貸倒損失では,アメリカを中心としてイギリスおよびドイツにおける規定に言及している。

 以上、本論文は,貸倒損失の認定基準について検討した意欲的な研究であり、先行研究と判例および外国法制を丹念に検証することを通じて、部分貸倒認容のための必要な理論根拠を提示している。すなわち、貸倒損失の認定基準としての全額回収不能基準については従来様々な批判がなされてきたが,債権の評価減禁止説が法人税法33条の解釈と理論的に整合していたため半世紀を超えてそのルールが適用されてきた。しかし,平成16年の興銀事件に関する最高裁判決にといて採用された社会通念という基準が全額回収不能基準の矛盾を明らかにしたものの,貸倒損失の紛争解決手段としては機能しなかった点を明らかにしている。それらの考察を踏まえ,平成21年度および平成23年度の法人税法改正により全額回収不能基準の妥当性が失われ,その代替基準として部分貸倒基準が新たな基準となり得ることを論証している点は、論理性や実証性という観点から高く評価されるものである。


論 文(PDF)・・・・・・756KB


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