公益財団法人租税資料館


トップページ>>租税資料館賞>>第24回入賞作品>>「同族会社における役員退職給与の適正額基準」
戻る 次へ

松澤 智也 稿
「同族会社における役員退職給与の適正額基準
 ―納税者の適正額基準と課税庁の適正額範囲―」

(大阪経済大学大学院 院生)

 法人税法上、役員退職給与は損金算入されるが、不相当に高額な部分の金額については損金算入が認められない。同族会社の役員退職給与の金額の決定については、恣意性・裁量性があることから、その支払い金額の妥当性を判断するためには客観的・合理的な基準が必要となる。本論文は、同族会社の役員退職給与の適正額基準の妥当な範囲について検討を行うものである。

 第1章では、実務上広く用いられている役員退職給与の算出方法は、功績倍率法(平均功績倍率法と最高功績倍率法)と1年当たり平均額法があるが、功績倍率法による役員退職給与の算出には最終報酬月額及び功績倍率を用い、功績の評価が反映されることから、その算出金額に恣意性が介入するという問題を指摘する。第2章では、功績評価をめぐる裁判例を分析し、定量的評価が基本的な功績評価として重視されるとする。第3章では、役員退職給与の算出方法の選択が問題になるところ、平均功績倍率法、最高功績倍率法、1年当たり平均額法が採用された事例をそれぞれ検討する。算出方法の選択について統一的な見解はなく、同業類似法人の平均値は役員退職給与の相当性を判断する材料の一つであり、功績など平均値では盛り込まれていない要素も勘案すべきであり、硬直的に適用されるものではないことを指摘する。

 最後に、納税者は同業類似法人の情報を入手することが困難であり、役位係数を用いる企業があるものの、筆者は、例えば、適正額基準として、勤続年数に応じた功績倍率を提案することによって、恣意性を排除した算定根拠を明確にできると結論付ける。

 同族会社の役員退職給与の算出にあたり、功績評価に恣意性がはいることから、適正基準を検討するという筆者の問題設定は明確である。法解釈と判例解釈が主な検討対象であり、同業類似法人基準との関係で争われた事例を具体的な数値を例にあげながら、課題とその解決策を論じる。裁判例が同業類似法人の平均値を硬直的に適用しておらず、納税者の情報入手が困難であり、功績倍率の最高額と平均値のいずれを採用するかも必ずしも明らかではなく、予測可能性を損ないかねないとする指摘は興味深い。妥当だとされた適正額と更正処分の間の開差は一定の許容範囲であることを明らかにしたうえで、恣意性の介入を縮小すべき適正額基準として、勤続年数に応じた功績倍率を提案している点はユニークである。文献の引用や記述にややラフな点がみられるが、本論文は全体として首尾一貫しており、評価ができる作品である。


論 文(PDF)・・・・・・658KB


戻る 次へ




Copyright (c) SOZEISHIRYOKAN. All Rights Reserved.